萩原朔太郎さんの「地面の底の病気の顔」自筆原稿
2011年04月25日
先日、前橋の「前橋文学館」を訪れたところ、萩原朔太郎さんの代表的作品「地面の底の病気の顔」のとても貴重な自筆原稿に接することができたのでした。
「地面の底の病気の顔」という詩は、詩集「月に吠える」の巻頭にまとめられた朔太郎さんの代表的な詩作品である。ところがこの作品の自筆原稿が長らくアメリカ人のもとにあり目にすることができなかったのだが、このほど所有者から「前橋文学館」へ返納されたというニュースを耳にして、この文学館を訪れてみたのだった。自筆原稿としておさめられているのは下記のようなものなり。
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地面の底に顔があらわれ
さびしい病人の顔があらわれ。
地面の底のくらやみで
うらうら草の茎が萌えそめ
鼠の巣が萌えそめ
巣にこんがらかっている
かずしれぬ髪の毛がふるえ出し
冬至のころの
さびしい病気の地面から
ほそい青竹の根が生えそめ
生えそめ
それがじつにあわれぶかくみえ
けぶれるごとくに視え
じつに、じつに、あわれぶかげに視え
地面の底のくらやみに
さみしい病人の顔があらわれ。
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この詩は、国語の教科書にも載っている有名な「竹」のベースともなっている名詩でもあり、こんな朔太郎さんの代表的な詩の自筆がアメリカ人の手に渡っていたとは至極残念なことでもあったが、今ここにきて帰国できたということを喜びたい気分である。
自筆原稿をながめれば、保存状態の悪さであろう、その用紙は黄茶色に変色しており、ペンの跡をたどる筆跡も、あまり鮮明には見て取ることができない。隣のブースに展示されていた「地面の底の病気の顔」後半部の自筆原稿の現物に比較したならばそれは明白であった。
ところでこの「地面の底の病気の顔」という詩の原型は、北原白秋が主宰していた機関紙の「地上巡礼」の第二号にて発表されており、その原型となった詩篇は多少のところで異なっている。例えば最後の3行の詩には、朔太郎さんの本名が詩篇に反映されており、それだけ個人的な思いが反映されていると感じ取れるのである。
ここではそんな「地面の底の病気の顔」の元詩の最後の3行を締めくくりとして紹介しておこう。
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地面の底のくらやみに
白い朔太郎の顔があらはれ
さびしい病気の顔があらはれ
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■前橋文学館
群馬県前橋市千代田町三丁目12-10
TEL 027-235-8011
休日:月曜日
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