「腐っても岡本太郎」の岡本太郎記念館はおすすめ
2010年04月18日
岡本太郎さんといえば川崎に大きな「岡本太郎美術館」があるが、まずは青山の「岡本太郎記念館」に足を運んでみることをお勧めする。表参道の駅から徒歩7~8分、閑静な住宅街を歩いたところにその記念館は存在している。住宅街の中には「PRADA」「Cartier」といった高級ブランドショップビルディングが軒を並べていたりしており、ただの閑静な街ではないことが見て取れる。実はこの場所こそ、岡本太郎さんが生前に創作活動の拠点としていた、いわゆるひとつのホームベースなのであり、アトリエや居住空間がほとんどそのまま残されている。岡本さんの私生活を追体験してみたと感じ取っても良いくらいに、生活観を、創作の匂いを残しているのだ。
この記念館では写真撮影が自由だということで、いろいろ記念に撮らせてもらった。撮影OKなどというのは当然のことだが、勿体つけてか何かは知らぬが、「撮影禁止」の四文字に慣らされていたことのこれまでの美術館鑑賞が詰まらないものとさせてしまう。我が国の美術界に対して岡本イズムが今後とも関わっていく余地は、まだまだ存在しているのである。
入場料は大人600円なり。受付スペースには関係書籍類やグッズが多数揃っているが、初めての人には「今日の芸術」(岡本太郎著/光文社文庫)をお勧めしたい。戦後間もなく発行された同名著書の復刊を望んだ横尾忠則さんが、自ら序文を書いている。余計な解説は不要だろう。以下に一部を引用しておきます。
「去年より今年、今年より来年みたいに新しい概念と様式ばかりを求めた結果、今や現代美術は完全に閉塞状態で息もたえだえである。これみよがしのアイデアだけの作品が多い。もうそろそろ頭脳的な創造から、個の肉体を取り戻そうとする生理的な創造に一日も早く帰還すべきではないのだろうか。そのことに気づけば、自ずともう一度岡本太郎の書をひもときたくなるはずだ。」(横尾忠則による序文「岡本太郎は何者であるか」より引用)
東京都港区南青山6-1-19
tel 03-3406-0801
紹介した青山の「岡本太郎記念館」では、かつて岡本太郎さんが居住と創作とをともにしていたハウスをそのままに、大量の作品を展示している。と いっても元アトリエに仕舞ってあったりする作品の数も多く、美術館の特設展示場ほどには、そのボリュームを感じ取れないかも知れないのだが、昨日も述べた ように、この記念館でしか体験できない貴重な出逢いに遭遇できるかもしれないのでお勧めなのである。
彼の生作品にまみえることのできた人は、その荒々しい筆致が目に焼きついてしまい離すことが困難となる。「今日の芸術は、うまくあってはならない。 きれいであってはならない。ここちよくあってはならない」という、有名な太郎さんのフレーズは、彼の作品に痕跡を記した生の筆致に触れてこそ、より深い理 解が可能となる。美術の教科書に載っている岡本太郎の複製画や諸々の画集などを眺めているだけでは得ることができない感動が、そこには存在しているのであ る。
3月3日から6月27日までの間、常設展示のほかに「岡本太郎の眼」という企画展示が開催されていており、太郎さんのあまり知られていない一面に接 することができる。一言で云うならばカメラにとらえた作品群である。だが、写真ではない。解説は、太郎さんの母親であらせました岡本敏子さんの言葉で締め くくろう。
「写真ではないのだ。岡本太郎の眼、岡本太郎の見たもの、
岡本太郎その人がそこに浮かび出る。
動かし難い存在感、造形的な構成力。
決定的瞬間などという言葉がヤワに聞こえるほど、きまっている。
がそれは、まさに一瞬の、一瞥の火花。深い。」(岡本敏子)