「1Q84」BOOK4に期待する
2009年10月04日
「1Q84」BOOK3の出版が確実となった今、僕たちが期待するのは、単に第3章としてのストーリー展開だけではなく、総合小説としてのこれからの展開である。ノーベル文学賞候補となって久しい彼だが、真に賞に値する作品を発表していくことを、僕たちは見守っていくべきなのだ。
そのために前提となることは、「1Q84」はBOOK4まで展開されねばならないということである。3部作というスタイルは、総合小説というジャンルに相応しくはない。それは4部作でなくてはならないのである。
世界に目を向ければ、真に総合小説として磐石な評価を受けているものの中に、4部作作品がいかに重要な地位を占めているかが判るだろう。「ジュスティーヌ」「バルタザール」「マウントオリーブ」「クレア」と続くロレンス・ダレルのアレキサンドリア四重奏。鬼才といわれたダレルが才能を開花させ、世界にその名を轟かせた記念作だ。20世紀の現代文学を牽引したジェイムズ・ジョイスの代表作「ユリシーズ」もまた四部作。かつて日本人のノーベル文学賞候補の筆頭とされた三島由紀夫はといえば、「春の雪」「奔馬」「天人五衰」「暁の寺」からなる「豊饒の海」四部作を遺して自害したという経緯も見逃せない。
村上春樹の古くからのファンとして、世界に誇れる総合小説にチャレンジして欲しいなどという我儘な願いを書いてはみたが、実はすでに春樹さんにも4部作があるということを最近知った。初期の「風の歌を聴け」から「1973年のピンボール」「羊をめぐる冒険」「ダンス・ダンス・ダンス」までを「鼠四部作」と称するのだそうだ。初期の作品のテイストはかなり軟派なトーンで埋め尽くされていたという記憶がある。確か「週刊プレイボーイ」(あるいは「平凡パンチ」だったか)に、「春樹先生に学ぶ女性の口説き方」見たいな特集が組まれていて、少年の一時期のおいらはそれらを読みふけっていたものである。
結論は、やはり春樹さんには軟派作家としてではなく、総合小説家としての四重奏作品を期待する。その延長としてノーベル文学賞があるはずである。