イギリス人アーティストが見た
「豊かな国」のホームレス


 ジェフ・リードさんは、英国のカレッジで絵を教えたり、精神病院などでアートセラピーなどを行ったりしている。
 これまでも障害をもつ人々の肖像画を描いてきた。来日1ヶ月前からマンチェスター市近くのホームレス宿泊センターに集う人々の肖像を描き始め、16人分を完成させた。
 「日本も英国も豊かな社会ですが、ホームレス問題をなぜ解決できないのか。自分はアーティストなので絵を描くという方法で、ホームレスの人たちと時間を過ごしながら、その答えを探してみたかったのです」
 8月15日に、ホームレスの人のために、第6回新宿夏祭りが開かれた。そこがジェフさんの、第1回目のアート・イン(社会に訴える形でアート活動を行う)の現場になった。
 「描かせてくれと声をかけても、人生に失敗しているので嫌だという人もいました。描いた人からは、暖かさやフレンドリーな感じ、そして激しい怒りも感じました。彼/彼女らは生命力が強いし、自分について強い気持ちをもっている人が多いですね」
 ジェフさんは「彼/彼女らは単なる描かれる対象では、ありません。僕の絵は共同作業ではじめて完成するもので、彼/彼女らが描かれたときにどう感じるかを大事にします」と、絵を描く姿勢を話す。
 肖像の後ろに、自分の好きだった女性の横顔など、何かを付け加える人も多い。それぞれの絵には描かれた人のメッセージが数行についており、胸を打つ。
 「片腕がケガで動かないのに、生活保護を打ち切られてしまい、怒っている」
 「路上生活になり落ち込んでいたが、周りのホームレスの人に親切にされ、今は幸せです」
 多くの人は、仕事をみつけて働きたいという希望をもっていた。現在は棚上げされている、ホームレスの宿舎(支援)センターを作る計画を早く進めて欲しい、という声も多く聞かれた。住所が定まり保証人ができれば、、それだけ早く仕事を求めることができるからだ。
 ジェフさんはこれらの肖像画を描きためて、ロンドンや東京、ニューヨークなどで個展をやる予定だという。
 「ホームレスというと、汚い、怖い、近寄りたくないと敬遠する人にも、アートという枠組みでこの問題に入ってきてもらえればと思います。彼/彼女らも、描かれることで発言することになり、海外で展示されれば発言が国際的なものになり、ホームレス問題の進展に貢献することができると思います」
 なぜホームレスを描くのか。ジェフさんは、
 「失業や病気という厳しい運命にさらされれば誰でも、路上生活者になる可能性はあります。生まれたときから恵まれない境遇を歩みホームレスになった人もいます。それでも生き続けている人々に、尊敬の気持ちをもっている」
 と答えた。


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