キャンバスにアクリル他ミクストメディア F50号
闇夜鳥
昔から闇の世界を探訪することが好きである。少年のころから、田舎祭りの余興で開催された肝試し大会には奮って参加していた。真暗闇を自分の足のみで駆けて行く姿は、自分にとって貴重な体験であった。闇から戻って集落に駆け込む自身はとても誇らしくあり、自分で自分を褒めてあげたい気分でもあったのである。そんな子供時代の誇らしい気分を携えて、今なお暗闇の探訪を行なっている。田舎の古道を闇夜に探訪したときはとてもスリリングであった。その道は、歴史的街道の一つであるが、今は昔の古道としてひっそりと人々を招き入れている。今では地元人の往来はほとんど無くなり、闇夜に行き交うのはイノシシ、ネズミ、等々の野生動物ばかりである。熊に出逢ったならイチコロ必至の危険地帯と云っても過言ではない。その場所は野生の危険が漂う場所であるとともに、憧れていた精霊たちとの邂逅をもたらす場所として感じられるのであった。うっすらと浮かび上がった色彩から彼等の聖なる息遣いを感じ取り、生態に近づくことが可能となった。闇の世界とは、霊たち、妖怪たちとの交歓をもたらし得る特別な世界である。真昼の世界に居ては得ることの無い特別な体験をもたらしてくれる。成長し大人となって以来もずっと、闇の世界を追いかけて続けている自分自身がいる。多くのアーティストたちと同様に、真実とは何か? を追求することをテーマとして制作活動を行ってきたが、闇の世界にはまだまだうかがい知れない真実が埋もれている。暗闇の中から出会った精霊たちの姿形に接することが、絶えないテーマを追い続けていくことなのである。
闇夜鳥 | 2020 | KatsuoGallery