佐藤泰志原作の映画「そこのみにて光輝く」を鑑賞


題名の「そこ」とは全てを捨て去った状況においての男と女の愛だと云うべきなのか…? 観賞後はまるで信じ難い結末が深くて重い感動の坩堝として渦巻かせていた。解釈は観た人々により夫々だが、この映画が訴えかけているテーマの重さは流石にズドン! と魂の奥深くを揺るがせずにはおかなかったのであった。

舞台は北海道の函館の、海と山とに囲まれた郊外。そんな場所に生きる行き場の無い状況に居る男と女たちが主役の物語である。「男」は山での仕事をある事件がきっかけにより逃避することを余儀なくされ、「女」は重く苦しい家族たちとのしがらみから逃れることが出来ずに、身体を売る生活に溺れかけて居る。逃れている男が求める求愛を逃れ得ない女は初めは拒絶してしまうのだが、次第次第に男と女の溝は埋められつつ行き場の無い愛の営みが芽生えていた。

そんなときにもう一人の重要登場人物の弟、即ち女の弟が引き起こす傷害事件により、行き場の無い状況が一気に動き始めて行くのだった。様々な犠牲を経て後に光り輝く瞬間が訪れていた。久しぶりに上質な日本映画に感動を受けていた。重く苦しく不条理な現実世界を反映したリアルなストーリーの果てのロマンを描いた同作品には、重く狂おしい感動を感じ取っていたのであった。