春の味覚の代表としての「初カツオ」を味わった。その身の色は鮮度まばゆい赤色に占められている。魚の青味を内に含んだ赤味とでも云おうか。大きく切りさばかれたカツオの身は、フレッシュさみずみずしさ至極であり、春の食欲を謳歌させる食材にもってこいであった。
マグロよりも小ぶりではあるが上品な味わいであり、人間の健康生活に必須の成分であるところのEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)の含有量が多いと云うことが挙げられる。しかも季節の旬を味覚で味わいつつ季節を愉しめるのだからこのうえも無い食材だと云って良いだろう。
「目には青葉 山時鳥(ほととぎす)初松魚(かつお)」という山口素堂の有名な句に象徴されるように、「初ガツオ」といえば春を告げる味として有名だ。脂身濃厚なモドリカツオは、例えてみれば中トロのマグロではあるが、鮪の赤身以上のフレッシュさを味わうことができるのが、初カツオなのである。近頃では春というより も、現代では5月から6月にあたる、初夏に近い季節の味として広くいきわたっている。