群馬県前橋市の「前橋文学館」では「詩壇登場100年 萩原朔太郎、愛憐詩篇の時代」という企画展が開催されている。
萩原朔太郎さんが詩壇に登場して100年の記念を込めての企画展示だということなのだが、些か無理強いしいの感がぬぐえないものがある。副題では「開館20周年記念」とあるが、実はこの記念展としての企画なのではないかと疑いたくもなる。
展示会場で初めて出会った展示物の中では「ソライロノハナ」という、朔太郎さんの初期作品を集めた自筆の歌集が目に留まった。朔太郎さんが本格的に試作を始めた時期に出版された、云わば処女作品集なのであるからそれなりの注目を浴びて然りではある。
その「ソライロノハナ」という作品集には、詠み捨てた千首の中から忘れがたいものや思い出深いものを集めて編んだという。初期の萩原朔太郎作品を知り理解する上での貴重な資料ともなる一冊である。
内容は序詞「空いろの花」「自叙伝」「二月の海」「午後」「何処へ行く」「うすら日」等々の短歌が書き込まれている。
ところで「ソライロノハナ」という朔太郎さんの詩集のタイトルが引用されて「カゼイロノハナ」という美術館の企画展が同時開催されている。同じ群馬県前橋の企画展ではありあまり批判等したくないのだが、郷土の巨匠の作品集のタイトルを一文一文字変えて別の企画展に援用するのはどう考えても合点がいかない。朔太郎さんへのオマージュ、尊崇を表すには、一文字変えるようなふざけた行為は慎むべきである。