後半部クライマックスが感動的な「そして父になる」を鑑賞

 

第66回カンヌ映画祭審査員特別賞を受賞した「そして父になる」を鑑賞。6年間育てた息子は他人の子だったということから、2組の夫婦とその家族が悩み傷付き、そして運命の選択を受け入れていく過程をドラマ化した描いた話題作だ。

福山雅治&尾野真千子の夫婦とその息子と、リリー・フランキー&真木よう子、という2組の夫婦が、それぞれの家庭環境を舞台にして、苦悩の時間を過ごしていく。だが一方ではリリー・フランキー夫妻の家庭は明るくあつけらかんにてやりすごし、もう一方の福山夫妻は悲劇の夫婦よろしくに地獄の谷に落ちていくのだ。

国際的な映画界の評価はともかく、物語の前段はといえば、何かプロットに嵌ったあまりカッコ良くないダサいタイプの脚本に、いささかうんざりとしており退屈感さえ感じさせていた。さらに言葉を加えるならば、プロット自体が凡庸であり、創造的なものはその中には感じ取ることができかねていたのである。

ところが物語の中段を過ぎてから、その上記の思いは攪拌され粉々に霧消ことになっていたというべきかも知れない。本来的な映画の物語が動き出すのは中段以降の後半戦にこそあったのだった。

主人公的な福山夫妻の生活環境は、三菱コンチェルンを連想されるべき大手建築会社のエリートであり、負けを知らない人間は人の心を知らないとまでに罵らされていく。前段におけるエリート臭さが木っ端微塵に弾け去ってしまう、象徴的なシーンの一こまとして印象的では在る。

物語の3分の2を過ぎたころになって、ようやく物語りは佳境に入るのだが、それ以降がこの映画の本物のクライマックスとなっているように思えてならない。すなわち3分の2に至るまでのドラマは前章としての幕開け的つくりではある。

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