狂い咲きした今年の上野の桜たち(夜桜編)

今年の桜は例年よりも1週間以上も早い開花であるということから、一般ニュースにもこぞって取り上げられている東京の桜たち。いち早く咲き誇っているという姿を見たくて上野の不忍池界隈へと歩を進めていたのである。

到着した時間は既に日没を過ぎており、宴会が禁止される午後8時にも近いという時間帯であった。何度か訪れたことのある上野不忍池周辺には、おびただしいくらいの観光目的な人間があふれていたのであり、その一部人間たちは青いシートやらを目印に陣取っての酒盛りに興じていた。世に云うところの「花見」の光景ではある。散策する一般観光客たちとはある種のバリアで隔てられているのだが、それにしてもこのような光景はこの時季ならではのものである。今日を過ぎては出遭うことの叶わぬ光景なのかとも感じ取っていたのである。

夜桜のビューポイントには、スポットライトが当てられて、夜なのにまるで生温かな空気が行き来しているかの錯覚にとらわれていたかのようでもある。仄かなピンク色した桜の花弁の集団的息遣いに、息をひそめて観測していたのであった。

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