天然かけ流しの秘湯「滑川温泉」に投宿

奥羽線「峠」駅から「滑川温泉」へと向かっていた。と云っても自力で登山したわけではなくて、宿の送迎の車に乗せてもらったのである。

送迎してもらった滑川温泉の「福島屋」は地理的に見ると山形県米沢市内にあるが、秘湯の一軒家と呼ぶに相応しい稀有な温泉宿となっている。自然のままにある山の風景と、天然かけ流しの温泉と、地元由来の料理、そして宿の人たちの人情、それ以外には無駄なものが無い。余計なものが無い。そういった特長を示している。ごてごてと着飾った温泉宿などは過去の遺物ではある。それに引き替え滑川温泉「福島屋」の存在は、あるべき将来像としての日本旅館の姿を示しているとも云ってよいだろう。

温泉は天然温泉100%のかけ流しである。新緑の息吹が香る露天風呂につかっていると日常の雑念は確かに消え去ってしまう。天然自然の力に対して人間の矮小な営みの様相がまるで馬鹿げた雑念の如くに捉えられてくる。自然の持つ力に対して人間存在の脆弱性が浮かび上がってくるのだ。

例えば人間にとっての「死後」という存在は、自然の大いなる営みの一部でしか無いのであり、観念的な雑念を排して死後の姿を捉えるには、此処のような特別な場所に居てしか感じ取ることが出来ないのかもしれない。そんなことを感じ取っていたのである。

この宿では自家発電によって電力供給を行っており、あまり電力を使い過ぎると切れてしまうので、電気を扱う関係者も大変なのであろう。おいらの滞在中も時々は電気が切れて中断となっていた。だが予想外なこととしては、インターネットのWiFi回線が回っていたために、おいらが持ち込んでいたノートパソコンの無線Lanにも対応していたので、滞在中のブログ更新も可能となっていたのだった。

夕食には「鯉の旨煮」が出されていた。川魚の王様こと鯉の旨煮であり、旨いことは申し分がないのだが、些か甘すぎるきらいがあった。こんな甘過ぎる味付けが必要なのだろうかと、訝しくも思っていた。

滑川温泉 福島屋
山形県米沢市大字大沢15番地
TEL.0238-34-2250