「辛味煮込み」料理についての考現学的考察

居酒屋の定番メニュー「煮込み」について、その味付けに変化が生じていることを痛感しているのだ。甘い味付けから辛味を効かせたものへとの変化である。そもそも料理の技とは味覚を競うべきものなり。それが辛いか甘いか、そのどちらかが勝利を得ることになるならば、それがもとでのライフスタイルの変化が起こって当然である。辛いものを好むか、或いは甘い味覚を好むかということは即ち、ライフスタイルへの甚大な影響をもたらすからである。そうなってしまったときには外的なライフスタイルの変化を強制させられることを覚悟せねばならない。

そんなこんなことからして昨今の「辛味煮込み」の隆盛を捉えるならば、煮込みは確実に辛味傾向にあると云って良い。そして辛味煮込みの具材の基本はというのが、牛筋なのだ。これはまさにチゲ鍋になくてならない具材であり、コラーゲンの宝庫と云えよう。韓国料理の最も重要な具材に数えられる代物なのだ。

味噌仕立ての煮込みの具材は小腸、大腸のモツ部分が主体であるが、これから辛味系モツ煮込みが覇権を競っていくにつれて牛筋という部位の需要がいや増していくことが必至である。