上州前橋に本店を構える老舗書店「煥乎堂」を訪れた。明治初年創業という伝統を持つ県内随一の総合書店として、地元の人々から親しまれてきた。おいらも物心ついた少年期から愛着を持ってこの書店を通ってきていた。川端康成さんがノーベル賞受賞した直後の小学生の頃には同店2階の文学コーナーを訪れ、女性店員のお姉さんに川端文学の美しさやお勧め作品のレクチャーを受けていたのであり、その講義内容はぼんくらな国語教師らを超えていた。いわばその場所は特別なスポットなのである。
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ところがそんな由緒ある老舗書店に異変が生じている。年々、訪れる度に客が減っているのだ。もっとも端緒なきっかけが「KEYAKI WALK」という一大ショッピングモールが駅南口の郊外にオープンしたことによる。ショッピングモール内には「紀伊国屋」書店が出店し、スペースや扱い書籍の数、等々で県内他店を圧倒している。
かつては「書物の宝庫」と自他共に認めた煥乎堂書店だが、現在は残念ながらその面影はない。陳列されている書籍群のほとんどは都内の有名書店ならばどこでも入手できるものばかりであり、「地元コーナー」扱いものの充実度も、過去の数十分の一という印象だ。げんに地元出身「司修」本の過去出版本はほとんどなく、近作数冊が並べてあるのみ。紀伊国屋KEYAKI店に後塵を拝していることは客観的に認めなければならないだろう。