昼時になるとたまに足を向けるのが、銀座四丁目交差点に隣接するDOUTORなり。サンドイッチが五百数十円にコーヒーを付けてしめて八百数十円なりと、チェーン店舗の喫茶店にしてはかなりの割高である。なんでまたこの様な割高な店舗へと足を向けるのかと云えば、地価日本一と云われ続ける銀座四丁目交差点の一等地を眺め渡すことのできる場所だからであり、この場所で、かつての一時期文化人類学の手法として風靡した路上観察を行なうためである。世の中を風靡した路上観察の対象はと云えば、石ころやガラクタのたぐいであったと記憶しているが、おいらの観察対象はと問われれば、交差点をぶらつき歩くおのぼりさんやら海外から遥々おいでましたる観光客だということになる。銀座の達人でもないおいらが銀座人を見下し観察するのであるからたちが良いわけが無い。吾ながらお恥ずかしい趣味のカミングアウトなのであるが、我慢し通し持ち堪える自信などないのである。
路上観察のことを横文字の別名で「フィールドワーク」と云う。こう云い換えると多少高尚な響きも有してくる。今日はしかるにフィールドワークのテーマを立てて、路上観察を敢行したのだ。題して「銀座四丁目スクリーン広告の考現学」である。銀座四丁目の三越本店には巨大なスクリーンが掲げられ、日夜行きゆく人々にスポット広告を流し続けている。その広告をフィールドワークしてみたのだ。不況の只中にあって、地下日本一の巨大スクリーンに広告を流していその広告主とはいかなるたぐいか?
・フジテレビ
・産経新聞ニュース
・ニンテンドー
・ブリジストン
・ミキハウス
・赤い羽根募金
・GMアジアパシフィック
・東京メトロ
・創価学会
・すしざんまい
とまあ、この様な広告主が並ぶのである。知名度だけでは計れないゲンダイの世相が見て取れるのだ。光あるところには影がある。不況下においても明るくスポットライトの当たる一等地でスポット広告を流し続ける広告主たちの、異様なる華やかさ志向、明るさ志向に接しながら、おいらの興味関心は、それらの影の部分に向いていたのであるが、そのあたりの考察についてはまだ少々時間がかかりそうである。