昨日の法要では、お寺から池袋近くの雑司が谷墓地でのお参りを行なった後で、上野不忍池近くの「伊豆榮」へと向かっていた。江戸の時代、徳川吉宗の治世の時からの営業であり、創業260年の時の歴史を有していると云う由緒溢れる名店である。
夏目漱石、森鴎外といった明治の文豪が愛したことでも有名であり、昭和天皇の侍従長であった入江相政氏の贔屓の店でもあった。
うなぎは大好きなおいらであるが「伊豆榮」に出向いてうなぎを食するのは、こんな特別な日にしか今まで無かった。だからであろうか、特に味わいの印象的には薄かったと云って良い。
今回はそんなかつてと比べて些か意識的に味わっていたのであり、その特徴を捉えようとはしていたものではあった。だがしかし、実際に味わった印象派といえば、非個性的なものであった。うなぎの細かな骨や内臓やらはほとんど完璧に取り除かれている。細かな仕事と云うのはこういうことを指して云うのだろう。
翻って評価すれば、個性的ではない味わいだと云うことになる。だがそれこそは「伊豆榮」のうなぎに対する最大限の評価であると思えるのである。
甘くなくうなぎの素材の出汁が充満している。関東風うなぎ料理の基本を守って、じっくりと蒸して柔らかく調理されている。
そしてタレもがまた良い味を出している。白砂糖などは一切用いていないと云うくらいなのだから徹底している。すなわちうなぎ料理の中の定番料理。うなぎの下に薄く盛られたご飯にはタレが程よくまぶされていて、これだけでもご馳走になるくらいの味わいなのだ。
そんなうなぎの身は箸で触ったら身が崩れるくらいの柔らかさであり、殊に年配の人たちにはとても優しい味わいなのだ。長年を経て愛される名店料理の、これが奥義と云うべきなのだろう。