先日訪れた中華料理店で「冷やし中華麺」を注文しようとしたら、季節メニューなのでありませんと云われた。だったらメニューに載せるなよと怒鳴りたくなったが、馬鹿らしいので流すことにした。だがそれ以来、冷やし中華が食べたくてしょうがなかったのだ。
暑かったり涼しかったりが交互に訪れる季節だから、メニューの一つ一つが店の売り上げを左右するということなのだろう。午前中に雨が降り注いだ今日は涼しい1日だったが、それでも冷やしが食べたくなっていたのは、先日の痛い経験が災いしていたのだろう。
ともかくも、本日は本年度初の冷やし中華麺にありついたのだ。
中華麺の専門店「揚州商人」での冷やしメニューは「冷やし黒酢麺」「冷やしタンタン麺」「涼風鶏そば」の3種類。迷わずに「冷やし黒酢麺」を注文した。
出されたのはたっぷり黒酢のスープの中に、ネギ、ザーサイ、鶏肉、キュウリのトッピング類が高く積み上げられたものだ。赤いクコの実が上に乗り、彩りを添えている。麺は下に隠れてトッピングを崩さなければ顔を出すことがない。
まずは黒々としたスープを一口。ほんのりと甘くまろやかでコクがある。生酢のツーンとした刺激の代わりにあるのは、黒酢独特の香りだろう。日本産の調味料には見かけないものであり、これが苦手だという客も多いと聞く。
具を崩して顔を出した麺は細麺であり、黒酢がよく麺に馴染んで喉越しもまろやかである。日本の伝統的な冷やし中華麺には見られない、新しい味わいであり、また何度か食べたくなる味であった。