寒さはまだ当分続きそうだが、一足早い春の香りがする菜の花料理に出食わしたのです。
そもそもおいらが子供の頃には、菜の花は観賞するために在る花であり、食用にされることすら思い描けなかった。それが江戸の街に出て以来、食用に供されることを知り驚いたという、カルチャーショック的体験があった。
それかあらぬか、菜の花のほろ苦い繊細な香りには、ひと際愛着を持っているのだ。黄色い花を咲かせる前の閉じた蕾の中から溢れる滋味こそ、早春の味わいである。
菜の花の辛し和え
おひたしにしただけの菜の花も充分に美味だが、ひと調味料が加わって、立派な料理になるという見本のような料理だ。春のほろ苦い苦味が辛し味と出逢い複雑な春の味となるのだ。
菜の花と桜海老のかき揚げ
どういう因縁なのかは分からないが、相手素材に桜海老が組まれている。桜海老の旬にはまだ少々早いのだが、イメージ的には春の味わいを演出している。玉葱や他の野菜類を組み合わせるよりは、菜の花の繊細さを削ぐことがないので、そういう意味ではなかなかの組み合わせといえるだろう。