先日下町の台東区に出向いた際に「あんこう鍋」のメニューに導かれるようにして今季初めて食したのが、上に示した写真の鍋である。
寒い冬ともなれば、冬の鍋の極北とも思える「あんこう鍋」が食したくなる。そしてあんこう鍋の本場、北茨城の平館地方に行きたくなるのだが、なかなか時間と財布が許さないまま今季も時を過ごしていた。
そんなときに偶然にもありつけたあんこう鍋は美味だった。あんこうの肝臓がドカンと目の最も近い前に乗り、さらに様々なあんこうの内臓類がどっさり丁寧な包丁さばきの跡も鮮やかに盛り上げられていた。しかも味噌味とくる。本格的なメニューなのだ。
火を通して数分後、ぐつぐつとして沸きあがる鍋の奥の奥の下からは、味噌スープに溶け込んだあんこうの香りが鼻を突いたのだ。それくらいにワイルドなあんこうを堪能した。値段はといえば大衆食堂料金の1,200円であった。これをラッキーと呼ばずにはおけようかとの思いが駆け巡っていた。
あんこうの身は引き締まっていて、しかも小骨や軟骨に絡まっている。この身を手でとって、一つひとつを口や指で掻き分けて味わうのがあんこう鍋の食し方でもあり、最大の愉しみでもある。
豊穣なるコラーゲンが豊富に含まれているだろうホクホクのあんこうの身を手に取り、口に含めて、至極満ち足りた気分を味わうことになったのです。