高田渡さんを思いつつ頬張る、吉祥寺「いせや」の焼き鳥

吉祥寺界隈を久々に逍遥散策した。JR吉祥寺駅の南口を降りて南に向かって暫らく歩くと、井の頭恩賜公園に突き当たる。公園の中には大きな池が陣取っている。池の周囲に散歩道があり、武蔵野界隈の市民の憩いの場所となっている。

かといっておいらは憩いを求めて散策したわけではなかった。この土地の人々の、熱っぽい営みに接したい、そしてまた、刺激的な出会いや発見を享受したいという、願いによるものだった。逍遥散策しているうちに行き着くのは「いせや」であった。云わずと知れた、吉祥寺の名物焼鳥店である。公園の行き帰りに通り過ぎるときの誘惑は甚大なものがあり、やはり吉祥寺を散策して「いせや」に立ち寄らないということは有り得ないのである。

吉祥寺に店を開いて80余年。今では吉祥寺市民の胃袋になくてはならない存在ともなったという、由緒正しき大衆居酒屋なのだ。これくらい地元市民に支持され愛されてきた居酒屋という存在を、この吉祥寺「いせや」の他に知ることはない。

音楽ファン、フォークファンであれば誰もが知っていることだが、ここ「いせや」の常連客として有名なのが高田渡さんである。おいらも何度かこの店でお会いして、世間話を交わしていた。そんなときの高田さんは、おいらにかぎらずとてもおおらかに対応していた。毎日のようにこの店に通っている高田さんを見るにつけ、おいらは何かしら、特別な目的意識を感じ取ってしまっていたのだ。すなわち、大衆酒場における芸術家による創作のネタ探しのようなものかと。おいらのようなルポライター稼業に勤しむ人間にとっては重要な行為であるから、つい余計な詮索をしてしまったようだ。

だが実際は、高田先生はといえば、今よりもずっと歩道にはみ出したその場所で、立ち飲みを楽しんでいらしたとのだろう。純粋に酒場で知人仲間と飲む酒、そんな時間が好きだったのだろう。下世話なるおいらの目論見が外れたということであり、高田渡さんの素晴らしさを益々再認識しているのであります。

■いせや総本店
営業時間: 12:00~22:00
電話: 0422-47-1008
定休日: 火曜日定休
住所: 東京都武蔵野市御殿山1-2-1