地元のスーパーで色艶の良い「牛スジ」を見つけた。早速、圧力鍋を引っ張り出して、牛スジの煮込みをつくったのでした。
そもそも一般に牛スジとして流通しているものは、主に牛のアキレス腱を指している。ほのかに赤く、煮込むと渋い茶褐色に姿を変える。だがその姿かたちは煮込むことによってその存在感を増すのである。煮込みの一連の調理工程を経た後の牛スジはと云えば、一見地味にも映るが、その実はその姿を凛として示している。他の素材ならば煮込まれて姿を無くすものを、牛スジばかりはしつこいように姿を消したりすることが無い。しかもまたこの煮込み牛スジの栄養素というものが、コラーゲン豊富な栄養素である。若い女性を虜にする要素というものがこの食材に隠されている。
牛の正肉や牛タンのような高級素材ではない。だがある種の低級素材の牛スジもまた、愛でて丁寧にかつ特殊的調理により、逸品の料理にもなるのだ。今日は牛蒡と蓮根とを一緒に煮込んでみたが、両根菜類にはともに味がしっかりと牛スジのエキスが染み込んでいて、まさにこのシンプルな煮込み料理の奥義を見たのです。感動ものなり。
この煮込みの出汁こそ、旨みの宝庫なのだ。明日はこの出汁を使って、冷麺か素麺か、饂飩か、…とにかく美味い麺料理をつくって味わってみようと思うのである。