伊豆の修善寺に旅しているのだが、ここに来る前の旅の途中で沼津港に立ち寄ったのです。そこには駿河湾で収穫された魚介類が豊富に陸上げされ、港周囲に立ち並ぶ市場には朝どれされた食材をふんだんに使ったメニューが提供されている。十数年ぶりの訪問の、今回の最大の目当ては駿河湾の名物「桜エビ」であった。過去に由比ガ浜で食べた「桜エビのかき揚げ」の味が忘れられないのである。
十数年前に来たときにはこんな賑わいは無かった。港周辺の風景は一変していたのだ。港町にも色々あり、例えば千葉の勝浦がいつでも長閑な港町風情を示してくれているのとは対照的に、常に前のめりに変化し続けているさまを呈示するかのようだ。
わざとお腹を空にして市場の食堂「かもめ丸」に到着した。メニューを眺めてみると「ぬまづ丼」が視界に飛び込んできた。桜エビに加えて生シラス、鯵が載っている。一目見てそれに決めた。10分くらい待たされただろうか、目の前のテーブルに出された「ぬまづ丼」は、桜エビ、、生シラス、鯵刺し、がキラキラと宝石のように光って視界に飛び込んできた。口に頬張ればますますその感動は高まっていた。一つひとつの食材がキラキラと舌と目を愉しませてくれる。どんぶりのご飯にもまた一味が加わっていることに気付いた。炊き込みご飯を使っているようなのだ。酢飯ではこうはいかない。旅の天晴れがここにあった。