奥多摩地区の二俣尾を散策していた先日に偶然遭遇した「吉川英治記念館」は、人気流行作家吉川英治氏が終戦の前年になって、それまで暮らしていた都心の赤坂から疎開してきた氏の屋敷がそのまま、記念館として残されている。大衆文学者として親しまれた氏の遺した遺稿類をはじめ、氏自ら筆を操った遺墨類、勲章などの記念品類、そして彼の著書の数々、等々が綺麗に展示されている。将棋の天才名人こと升田幸三氏ら友人から贈られた書もあった。散策のコースとしてはもってこいであった。母屋に接して立てられた書斎は、ここで「新平家物語」が執筆されたという由緒ある風情を醸し出している。