昨日紹介した青山の「岡本太郎記念館」では、かつて岡本太郎さんが居住と創作とをともにしていたハウスをそのままに、大量の作品を展示している。といっても元アトリエに仕舞ってあったりする作品の数も多く、美術館の特設展示場ほどには、そのボリュームを感じ取れないかも知れないのだが、昨日も述べたように、この記念館でしか体験できない貴重な出逢いに遭遇できるかもしれないのでお勧めなのである。
彼の生作品にまみえることのできた人は、その荒々しい筆致が目に焼きついてしまい離すことが困難となる。「今日の芸術は、うまくあってはならない。きれいであってはならない。ここちよくあってはならない」という、有名な太郎さんのフレーズは、彼の作品に痕跡を記した生の筆致に触れてこそ、より深い理解が可能となる。美術の教科書に載っている岡本太郎の複製画や諸々の画集などを眺めているだけでは得ることができない感動が、そこには存在しているのである。
3月3日から6月27日までの間、常設展示のほかに「岡本太郎の眼」という企画展示が開催されていており、太郎さんのあまり知られていない一面に接することができる。一言で云うならばカメラにとらえた作品群である。だが、写真ではない。解説は、太郎さんの母親であらせました岡本敏子さんの言葉で締めくくろう。
「写真ではないのだ。岡本太郎の眼、岡本太郎の見たもの、
岡本太郎その人がそこに浮かび出る。
動かし難い存在感、造形的な構成力。
決定的瞬間などという言葉がヤワに聞こえるほど、きまっている。
がそれは、まさに一瞬の、一瞥の火花。深い。」(岡本敏子)