油蝉が煩く鳴き喚く歩道を通り過ぎようとしていたとき、歩道の隅には油蝉が仰向けになって蠢いている姿を発見した。通常は大木の幹にしがみつきながら、キンキンギャーギャーガーガーと云った声を鳴らしていくのが一般的だが、中には大木にしがみつく体力も失せたのか、歩道上に仰向けに転がってギャーギャー騒いでいる蝉に遭遇したという訳なのだった。
そんな姿に遭遇したおいらは、仰向けの蝉の背中を押して、くるっと反転させて、正常の地面に居る姿にかえしたのだが、中々蝉が飛び立とうとはしないのだった。ぜいぜいと飛び立とうという意欲は見て取れていたのでずっと見守っていたのだが、ついに飛び立つことが叶わなかったようなのだ。蝉もまたおいらたち人間以上に、この猛暑に対しては命掛けの様相なのである。