イカワタのホイール焼きを食した。イカの身をカットしてホイール焼きにしたものは、シンプルながらイカスミの味覚を味わえるのだから理に適った逸品である。イカの内臓のスミはまさに抜群の調味料なのである。イカのワタを使った料理としては「イカスミパスタ」ばかりが有名だ。イタリアン料理にとってのイカワタの重要さは日本人が考える想像以上ではある。だが怯むことはなくて、日本料理にもそれに匹敵するか凌駕しているくらいの料理はあるのだ。「イカワタのホイール焼き」というメニューがそれである。イタリアンの調味料とばかりに評価されているイカスミだが、日本のイカスミ料理もまんざらではないと合点した。特に焼き物といった基本的な日本料理のメニューの中にもイカワタの王道料理が存在しているのである。イタリアンの王道にも匹敵するのが「イカワタのホイール焼き」なのである。ところで、イカ墨の色素成分はメラニンである。さらにはアミノ酸の含有率が高く、健康成分を多く含んでいる。黒いしきそはそれだけみればまがまがしくもあるが、調理に用いられたものを観察していくと、とても深遠なる色彩であることを発見する。そもそもは、イカ墨を原料とした顔料のことを「セピア」と呼ぶのであって、黒い色彩とばかりとは限らないのである。深い褐色の黒味をふくんだ色彩なのであり、その色彩表現力は強力なのである。