地元の焼肉店にて久しぶりに「ギアラ」を食した。牛の第4胃部位である。別名「赤センマイ」「アカセン」とも呼ばれ、コリコリとして歯応えがあるのが特徴である。噛み応えも抜群なるギアラは、例えてみれば、脂の乗ったスルメイカが素材とされる特別なスルメにも匹敵されるべきものではある。
そもそも牛という哺乳類は、4つの胃袋を持っている。「ミノ(第1胃)」、「ハチノス(第2胃)」、「センマイ(第3胃)」、「ギアラ(第4胃)」の4つである。草を主食とする草食動物でありながら、このような独立した胃袋を持つということは即ち、人知が及ばぬ自然の叡智が働いている一つの実例であると考えられる。生命を維持する機能の細分化については、人間が他の生物をおいて断トツだ等という説は、説得力を持たない俗説の一つとして取り扱われるべきである。それはさておき、4つの胃袋の中では「ハチノス(第2胃)」、「センマイ(第3胃)」の2つがモツ焼き屋の人気メニューとなっているのは、それらの独特の見た目、派手なルッキングのパフォーマンスによっていると常々考えていたところだ。それに引き換え「ミノ(第1胃)」、「ハチノス(第2胃)」の2つは、胃袋としての重要な機能を担っているのであり、ある種の地味なこの2つの胃袋が有する機能とともにその味わいもまた特筆されるのだ。「ミノ(第1胃)」はピチピチの歯応え抜群であり、「ギアラ(第4胃)」の方は見た目は悪いが奥深い味わいが楽しめる。新旧世代のある種の特徴が、この食材についても云えるのかも知れない。