今月発表された芥川賞受賞作の「ブラックボックス」を読みました。もとより芥川賞と云えば、かつての天才作家の太宰治さんも村上春樹さんも、ともに受賞を外されたなどという、汚点満載のいわく付き文学賞ですが、一つは、受賞作品のタイトルに惹かれたことや、テレビに映った受賞者・砂川文次氏の面構えに思わず知らず感情移入してしまったこと等から、ふと何年かぶりで受賞作品掲載「文藝春秋」誌を手に取ったというわけなのでした。
読み進めるにつれ、タイトルの「ブラックボックス」とは、表舞台としての一般社会からは隔絶された、非正規労働現場だったり、監獄内の日常現場だったり、不甲斐ない男女の在様だったりすることが合点され、結局最終頁まで興味を削がれることなく読了したのでした。特に後半部分は、同じく監獄生活をテーマにして描かれたソルジェニーツィンの「収容所列島」を彷彿させるところ等もあり、それなりに充実した読書体験となったのです。
「ブラックボックス」とは時代や社会につれて姿形は変えども、常にその存在は身近なところにあることを、忘れることなく生きていくことは重要なことと再認識。せっかくの読書体験が風化しないうちにと、自分自身に急かされながらエスキースとして描いたのが、タイトル「ブラックボックス」と名付けた下に記す作品です。
キャンバスにアクリル他ミクスドメディア F4号