東京から上州へ帰省する途中で大宮に立ち寄った。その立ち寄った店というのが、なかなか個性的な立ち飲み店だった。大宮駅から西口を降りて4~5分歩いたところに在るその店舗は、石丸酒店という酒屋の隣に在ることから店舗名も「角打ち 酒屋の隣」と云う。造り酒屋の隣のスタンドBarという個性的な佇まいが興趣をそそるのであり、おいらはその店に誘きられるかのように門戸を潜っていた。店舗名はオーソドックスであり、半面的にその門戸の佇まいは一見客がほとんど判別しがたいくらいに控え目に見えていたのである。隣が伝統的店構えの酒屋で此処が立ち飲み居酒屋。けっこうな普通っぽいシチュエーションでありながら実際の店舗の風情が見せる其の佇まいは、決してありきたりな光景ではなかった。
店内には埼玉県内の酒蔵のものを含めて数多くの日本酒の酒瓶が並んでいる。ここはさしずめ日本酒蔵が経営する日本酒のバル(Bar)かと彷彿とさせているのである。とりあえずおいらは地元埼玉に蔵元を有するという「豊明」を冷にて注文してみたら、其れは軽くグラスの中にどぶろく風の沈殿物を湛えていて其れがグラスの中に漫遊する様がとても興趣をそそっていてしまったのであり、しかも口にした其の味わいがふわっとして刺激的な、何とも云えぬ口当たり感のものだったので、とても驚かされていたのである。此の「豊明」という酒は、製造過程に様々な工程を経ることにより、一般的な日本酒にはない独特の口当たりが生まれているのだ。そしてもう一つ口にしたのが、地元埼玉の銘酒として評価の高い「神亀 ひやおろし純米」をゆる燗で味わったのであった。こちらは正統的な日本酒の口当たりで、飲みやすくて、しっかりとした純米の旨味が染み込んでいるのだった。
酔に潰れてはいかんと三杯程で店を去ることになったが、日本酒の良き味わいを再認識するにふさわしい居酒屋体験であった。
■角打ち 酒屋の隣
埼玉県さいたま市大宮区木町2-403