上州こと群馬県みなかみ町の「たくみの里」を訪れたのだった。上州の最北部に当たる地域の一帯は、おいらの母の実家が在り、おいらにとっては第二の故郷とも呼ぶべき特別な場所である。夏休みやその他定例の休暇があればよくこの場所に通っていたものである。夏休みの一時には必ず其の地に居を得ていたのだ。其れくらいにおいらと母の出身地であるたくみの里との繋がりは深いのである。当地域には20数軒の体験型の工房が点在していて、子供から大人、高齢者に至るまでの老若男女が、様々な工房にて、ものづくり体験が出来るので、今では北群馬の人気の観光エリアとなっている。母の実家の家屋では今ではおいらの従姉妹の人が営む手作り雑貨の人気店となっている。久しぶりに同店舗を訪れたのだが、丁度従姉妹の人が店案内をしてくれたり、パートナーの作家の人との昔話に花が咲いたり、第二の故郷としての実感を身に再体験するような特別な時間を過ごすことが出来たのである。日本の原風景が残る故郷の一つとしての評価も高まるたくみの里には「熊野神社」という極めて素朴な風体を漂わせる一帯がある。スラリと伸びて巨大な樹々が生い茂り、境内には澄んだ水が流れる水路が走り、幼少の頃に読んだであろうお伽噺の舞台が再現されたかの印象を抱いていた。惜しむらくは、従姉妹の経営するショップ工房を離れる時から急激なる豪雨に見舞われてしまい、宿に着いても一向に雨が上がる気配もなく、一つの目的としていたたくみの里にてのホタル観賞が出来なかったことである。時期的にも少々早かったようだが、それにしてもついさっきまでの豪雨に打たれてしまってはホタルに逢うのも不可能となってしまったのだった。