ホヤとは主に岩手のリアス式海岸沿いで収穫される、海のパイナップルとも称される逸品である。おいらは此れがことのほか好きであり、海鮮居酒屋で此のメニューを目にするとほぼ反射的に注文してしまう。本日久しぶりに食した「ホヤのポン酢」もまた、鮮度の良い生のホヤとポン酢との相性が抜群であり、海のパイナップルの称号に恥じない味わいなのであった。外見はグロテスクなことからなかなか口にしない日本人も多いというが、この味を知ってしまったら食べないわけにはいかないと云えるくらいに逸品の味わい。ポン酢が素材の味を引き立てている。東北の地場食材としてもっとも愛着に満ちた逸品である。まさに東北からの恵みの味だ。そもそもは上京して間もない頃のおいらは、「ほや」は食べられなかったと記憶している。原始的記憶以降のものであるので、その信憑性は大である。いつから「ほや」が食べられるようになって、しかも何時からかは「ほや」こそ酒の肴の逸品であると思うようになったのであるから人生はまた不可思議なのである。日本における主な生息地は東北の北東部であろう。一部では「海のミルク」などと称されることもあるようだが、決してミルクのような味わいはないだろう。むしろ、磯の香りがぷんぷんと漂っていて、とてもはじめての人にとっては箸を付けたくないような、そんな香りの肴なのである。