鍋が恋しくなる季節であり、近頃のおいらは何かと餃子に目が向くということもあり、手作りの水餃子鍋をつくったのだ。
基本の中華味スープに甜麺醤、豆板醤を足したところに、白菜と葱、そしてなめこ茸とプレーン餃子を5分ほど煮込んで出来上がったのが、おいら流自家製の「水餃子」である。
水餃子の食感はもちもちとして他には比べようが無いくらいに絶品至極也。なめこのとろみと中華スープの相性もすこぶる宜しい。結論的には水餃子鍋は結構いけるということなのである。
台風も経験していよいよ季節は秋本番。こういう時期こそ常備菜として料理しているのが「ひじき煮」てである。干しひじきとして販売されているものを水で戻して煮込むという、シンプルでありながらとても素材の持ち味を活かした料理であり、その海の幸としての独特の香りは他に類が無く、根菜類との相性も抜群である。今回は戻したひじきとともに、大豆、人参、そして戻した干し椎茸とともに調理した。干し椎茸を加えることで乾物料理としての奥深さがより深まっていくようである。
おいらが此れまで生活習慣病も発症せずに生命的にも生息してこれたということは、ひじきの煮込み料理に依ることが大なのであるということを思っている。其れくらいに体調管理にとっては必須のメニューなのである。月に数回は調理する我が家の日常食の定番メニューの一つだ。古くからの日本の食材「ひじき」だが、実はこれこそ日本が誇る長寿食の中心に置くべき貴重な一品と云うべきなのだ。我が国では国内のほぼ全域で採取されるが、国外では中国および朝鮮半島の一部でしか棲息しない。しかも日常食として浸透しているのは、日本のみだと云ってよい。これらの日本の伝統食の素晴らしさを世界に広めたのが、桜沢如一氏らによる「マクロビオティック」の食養生の思想である。欧州や米国の著名人たちが信仰している「マクロビオティック」という思想は、世界大戦以前に桜沢氏らによって広められた運動が基本となっているものだ。マクロビ思想によると、毎日の献立の中で「豆類、海藻類」を5~10%摂取することとされている。「ひじきと大豆の煮物」のようなメニューを、1割は摂りなさいと云うのが基本である。改めてひじきの健康要素を見てみた。食物繊維、亜鉛、カルシウム、マグネシウム、ビタミンB群、等々の栄養素が豊富であり、これにしか含まれないものも少なくない。栄養過多と云われる現代人の多くが、ひじきに含まれる必須栄養素の何かが不足しているのだろうという疑いは拭えないのだ。
アンコウという魚は冬季にその美味さを発揮するものであり、キモを調理したアンキモもまた、冬を感じさせるメニューである。そんなアンコウのキモことアンキモを早々にも味わったのだった。冬の深海に生息し、この時期の味わいが絶品の鮟鱇(アンコウ)。今年も冬の間に「アンコウ鍋」など食したいと考えている。そんななか、アンコウの肝こと「(鮟肝)アンキモ」を食する機会に接し、なかなか絶品的味わいだった。食した「あんきも」はといえば、そのあんきもの良さを丁寧にていねいにと心を尽くして手づくりした逸品なのでした。多少脂っこいのがあんきもであるが、こんなに丁寧に調理されてあると、とてもすんなりと咽越しよく味わえるのです。これをつくるのには、蒸して干してを繰り返して数日かかるのだとか。鮟鱇をさばいたことのある人なら強烈にその、大きな肝が目に付くのですが、その肝こそ美味なる味の宝庫なのです。「あんこう鍋」にもこのあんきもが必須の素材となります。
上州前橋に帰省しているとき丁度「風のまち音楽祭」に出会していた。10月4、5日に渡って開催されていた「風のまち音楽祭」というイベントで、偶然にも「バーボン・ストリート・ブルース」を演奏するグループの姿に接して、意外な出逢いに歓んでいたのであった。
演奏していたのは「ザ・ソラオショー」というグループ。主に高崎市内を拠点としているグループのようである。北関東で唯一のウクレレジャクバンドだということである。ストリートでの演奏が得意で、聴いている人をワクワク楽しくさせる音楽が目標だと、公式チラシには記されていた。
「バーボン・ストリート・ブルース」という曲はおいらがもっとも敬愛するミュージシャンの高田渡先生の名曲であり、この名曲を彼らなりにアレンジしながら前橋の市民を楽しませていた。これは前橋出身のおいらにとってはとてつもなく感動的なビジョンとしての一齣であったのだった。
「街並みと音楽との調和・共生」を目指して、中心市街地で開催する市民参加型の音楽祭です。ーーというのが、公式サイトにおける同音楽祭についての説明である。前橋の市街地(現実的には旧市街地)の商店街における様々なスポットを会場にして、この「風のまち音楽祭」は開催されていた。主催者、関係者の熱い思いはそこかしこに示されていておいらの胸にもググッと伝わっていたのである。
■風のまち音楽祭
http://kazemachimusic.blog84.fc2.com/
秋田県を旅している中で「じゅんさい鍋」という思いがけない逸品に出くわしていたのだった。訪れたその居酒屋では夏にも鍋料理を提供しているということで、中でも秋田の名産のじゅんさいをふんだんに利用しており、これぞ秋田の鍋と云うべき逸品であったのだ。
じゅんさいという食材は秋田という土地柄と不分別にあり、すなわち秋田で採られていてこそのじゅんさいなのである。白神山地から湧き出て流れ着く清流によって育てられるのがじゅんさいである。ぬるっとしたゼリー状の食感は、白神山地の恵みの存在を抜きにして存在し得ないものとなっている。
秋田の代表的な鍋と云えば「きりたんぽ鍋」だが、「じゅんさい鍋」の味付けの基本は、このきりたんぽ鍋を踏襲している。醤油ベースの甘辛いスープには、秋田の伝統料理のレジェンドを感じていた。泥臭いくらいにぐっとのどを潤す味付けだった。夜の酒が進んだことは云うまでもないのだ。
度の途中で盛岡で途中下車し、じゃじゃ麺の元祖の店「白龍」に立ち寄った。店舗の在るのは盛岡城跡公園に接した場所で、桜山神社参道と呼ばれる一帯にある。この一帯が市の再開発だとかで取り壊しされる計画も在ると以前に聞き及んだりしたことから、かねてよりとても行きたい店の一つとなっていたのだ。盛岡では何度か郷土食の「じゃじゃ麺」を食してきたが、元祖店としての「白龍(ぱいろん)」にはこれまで訪れたことが無かったのである。
盛岡郷土食の「じゃじゃ麺」とは、うどんのような麺を時間をかけて柔らかく茹であげ、その上に特製秘伝の胡麻味噌が乗っている。さらには刻まれたきゅうりとネギとおろし生姜と紅生姜がトッピングされているのだが、同店の「じゃじゃ麺」を食するには幾つかの掟がある。。先ずはこれらをかき混ぜることから食事の工程が開始される。よーく混ぜて食べてくださいというアナウンスが店舗関係者からされているので、充分にかき混ぜてみる。そして口に運んだ麺の味はと云えば、濃い味噌の味とともに黒胡麻の風味も豊富である。一寸関東人のおいらにしては濃い味の塩気が襲ったが、ガツンとしたインパクトはナイスな好印象を抱かせていた。掟の最後には、食べ終わった皿に生卵を割ってよーくかき混ぜてそれにじゃじゃ麺の具と茹で汁とでスープを作って啜る、というものだ。掟にしたがって作って食べてみたが、想像通り、云わば特別な発見など無いままにスープを啜っていたのである。
とにもかくにも元祖の「じゃじゃ麺」を体験したことで、これから我が家でもこのインパクトある盛岡の郷土食を作ることができるかもしれない。そんな貴重な味覚体験であった。
■白龍
岩手県盛岡市内丸5-15
日本海に沿って走るJR五能線に乗り、青森県の港町・鯵ケ沢を訪れた。駅近くでレンタサイクルを借りて走った。港町ならではの湿った潮風に吹かれながら通りを行くと、数分で海岸沿いの幹線通りに突き当たっていた。地元界隈では「焼きイカ通り」等とも称される道であり、イカの天日干しが並ぶことがあるという。残念ながらそんなイカ干しの風景に遭遇することはなかったが、様々なイカ漁の痕跡に接することが出来たのだった。
イカや他の海産物と並んで鯵ケ沢の名産品がヒラメである。ヒラメは都内で食べると相当な値段を覚悟しなくてはならない白身魚の高級魚であり、それが大量に収穫されることから、此の地ではヒラメは「漬け」にして食されるのが一般的なのだという。ヒラメを漬けて丼にしたのが「ヒラメの漬け丼」。此の地の名産的メニューとして認知されている。おいらが食した「ヒラメの漬け丼」は、塩辛さ控えめの甘辛の漬け汁にじっくり漬けられた逸品で、高級魚のヒラメを思いの外に味わうことが出来たのであった。