秋の入り口に辿り着いたら「けんちん汁」が恋しくなっていたのである。御存知けんちん汁とは、鎌倉の建長寺が発祥とされる精進料理の中の汁物料理の一種である。建長寺の汁こと「建長汁」がなまって「けんちん汁」になったといわれる説が有力である。元々けんちん汁とは、鎌倉建長寺のお坊さんによって考案された精進料理の一種とされている。肉類、魚類を用いるのはご法度と云う制限がある。普段はカツオ出汁を使うところだが、今回は昆布茶の元を出汁代わりにする。椎茸や根菜類から滲み出る天然の出汁で煮込まれるので、とても優しい味付けに仕上がったのだ。
此のメニューはと云えば、牛蒡、人参、蒟蒻、等々の根菜類を主体にして煮込み、醤油味で素朴に味付けをしているのが特長である。根菜類は夏を終えた秋からその存在感を増していくということもあり、秋季の料理の定番的な逸品なのである。人参、大根、牛蒡、等々の根菜類が自然と貯まっていくこの季節。冷蔵庫の中の椎茸、蒟蒻等を合わせて「けんちん汁」にしたのだった。
旬の平茸が手元にあったので、これをいっぱいに入れて煮込んでみたらとても福々しい味わいだったのであり、けんちん汁には平茸がよく似合うということをあらためて実感しているという次第なのである。