久しぶりのぶらり旅に出た。目指していたのは青森と秋田に跨る白神山地の其の入口の、十二湖と呼ばれる湖沼地帯であり、中でも「青池」と呼ばれる憧れの池がターゲットなのだった。
JR五能線の各駅停車に乗り「十二湖」駅で降り、そこからバスに揺られて数十分で「キョロロ」という物産店前のバスの終点地に辿り着いた。そこから車を拒絶する遊歩道を歩いて数分の処に目的の青池は存在していた。旅の途中で一時俄雨に見舞われたことがあり天候が気掛かりだったが、青池に到着して目にしたときのその風景は適度の曇り掛かった中での遭遇だったが、余計なものがない分、ストレートに青沼の発する表情と向かい合うことが出来た。初の対面で出遭った青池は近付くなり、其の湖面を目に焼き付かせてしまったのだった。確かに云われているような濃青色の色面に覆われていて、こんな色の出処を先ずは探っていた。何か仕掛けがないのか? という云わば懐疑的なる思考に脳内を占拠されていたということであるが、そんな懐疑心を断ち切る現実との遭遇に厚い期待感を抱いていたということのほうが重要なのである。
バスの終点地を降りてから青池までは500メートル程度で徒歩数分のの距離である。此処までを終点と決めて帰路に付く観光客は多いが、其処からの散策コースが実は同地帯の本当の見せ場となっていたのだった。
青池からさらに奥に歩を進めてブナの原生林を歩いて行く。ブナの巨大な樹々に囲まれてマイナスイオンが醸し出す空気感が絶品である。空気に色があるとすれば此れこそは青色と云うべきであろう。ブナという樹木は秋には黄色紅色の紅葉色を身につけるというが、残念ながら季節はまだそんな秋の旬には一寸早かったようではある。「沸壺の池」の指標を目にしたのはそんなことなどを考えていた頃のことだ。散策に数十分を要していた頃に出逢ったのが、「沸壺の池」であった。池に辿り着く前から滝の水が流れるかの如くの音に引き寄せられていた。滝の音としてはとてもピュアに感じる音色である。実は辿り着いて判然としたのだが、此の音は滝の音などではなくして、白神山地から沸き上がる伏流水が流れ出て集まってきていた湧き水の音だった。此れを聞いた時はそのとても衝撃なインパクトに感動し、何故だか心が湧き水で洗われたような気分だったのである。
ところで「青池」と「沸壺の池」の湖面の水の色が何故ブルーなのか? といった疑問については、過去には様々な調査探求が行われたというが、その実態については不明であるとのこと。素人ながら考えるに、通常は周囲の緑の樹木の色を反映して緑色となるべきところを、何かの要因で濃青になってしまったということ。つまりは緑色からある色素即ち黄色が削ぎ落とされたから濃青となったのだ、という仮説が成り立つ。おいらはこの仮説を信じているが、仮説が真説に格上げされるといった見込みについては、今のところは無いのである。