残暑が厳しい折に立ち寄った店で鱧料理を味わった。注文した「鱧の湯引き」というメニューは、湯引きした鱧の身を丁寧に骨切りをして、梅肉を添えて出される。関西地方の鱧料理の中では定番中の一品である。そもそも鱧の湯引きと云うのは、関西地方ではポピュラーだが、関東地域に於いてはとても特殊なメニューとなっている。新鮮な鱧の身を湯引きする前にとても繊細な骨切りという調理工程を必要とするのだ。この骨切りを上手に出来る調理人は関東地域にはあまり多くはないのだろう。骨切りをしている調理場を見ているわけではないのだが、専門の場所で作られた調理済みの食材を店頭でアレンジして提供された代物だろう。鮮度という点においては些かインパクトに欠け難がありそうだ。
そもそも鱧という魚類は全長1mくらい、もっと巨きいものでは2m以上はあるといい、ウナギ目・ハモ科に分類される魚の一種だという。鰻ほど脂は乗っていないので、その栄養素については軽視されているが、実はこれがとても生命力溢れる魚の一種なのである。鱧のいわば獰猛な顔はその顎と歯の発達した形相において特徴的である。同じ魚類の中では獰猛且つ個性的な種類として特筆できるのであり、その生命力から得られる食材としてのパワーについては注目に値するものなのである。まだまだ残暑が厳しいがときはもう夏の終わりである。こんな夏の終わりの時季に味わったのが、夏の季節感を漂わす鱧料理なのだった。