上に示した写真は豚のモツの刺身也。部位はハツとレバーである。何時からだったか牛のレバ刺しの提供が法律により禁止され、生のモツを食べる機会が極度に減ってしまった。今ではごく稀に豚モツの刺身に遭遇することがあるので、そんなモツ刺しを探すなどして下町散策にもいやがおうにも興趣が高まるという訳である。
スカイツリーの城下町風情の趣きを漂わせる押上近辺を散策してふと立ち寄った「松竹」という居酒屋は、まさにそんな興趣を満たすには最適なる店だった。古からもつ焼きが評判の同店なのであるが、昨年にかねてより焼場をまかなっていた前の女将が引退したことにより、今の女将の時代になり焼き物は止めたということなのだという。今どき珍しい、もつ焼きが無いモツ専門の居酒屋なのである。
カウンター中心の、十人少し入れば満席になるという小規模の居酒屋店にて、現女将ひとりでは立ちいかなくなったという。そんな事情が関係してなのか、新鮮な豚のモツ刺しには遠くから訪ねても口にするだけの存在感がある。
モツ刺し以外に食べた「レバカツ」「モツ煮込み」は、下町の良き味わいを感じさせて納得の味わいだった。東京下町の居酒屋で、しかも蒸し暑い空間にて口にしたモツの刺身は、下町に来る度に口にしたいと感じさせるに充分だったのである。