ジトジトして鬱陶しい雨模様の日々が続くが、活き活きした紫陽花を見ると思わず足を止めて見とれてしまう。雨がちょうど紫陽花を彩る化粧油のようだ。年間を通してこの時期ほど町の裏通りの景観に思いを寄せることはないだろう。ただ緑の植え込みだとして見過ごされるものが、色々とりどりの花やガク等を開いて人々の目を釘付けにするのだ。こんな景色はやはり散歩しながら求めていくしかない、季節の風物詩なのだろう。
漢字で紫の陽の花とは書くが、紫色のものばかりとは限らない。赤いもの、ピンクのもの、白いもの、赤青混色のものなど色とりどりである。一般的によく見かける手鞠に比せられるものは「セイヨウアジサイ」という品種だ。花弁のように見えるのは実はそうではなく「ガク」に当たる。本当の花弁はもっとずっと奥深くに隠れている。最近良く目に付く種類が「ガクアジサイ」と呼ばれる品種だ。花弁に見えるガクが取り巻いているその中央部分には細かな花弁が密集していて、生き生きとして微小に咲き誇るその様は見るものを釘付けにしてしまう。紫陽花の花言葉とは「移り気」「高慢」「辛抱強い愛情」等と云うことだが、場の状況や時間の推移とともに花の色を移り変えていくということからも「移り気」というのが最も的を得ているように思われる。何しろ「七変化」と云えば女性の心と紫陽花の花弁と考えていたほうがよさそうである。紫陽花とはこの季節でしかまぐわうことのできない花なのであり、特別な興味関心を持って追求していきたいと思うなり。