上州こと群馬県の隠れた名湯「四万温泉」に旅したのだった。JR吾妻線の中之条駅からバスで40分程度を進むと、四万川に沿って趣きある温泉街が並んでいる。さすがに国民保養温泉第一号だけのことはある。由緒正しい温泉街の光景が迎え入れたのである。バスの終点から徒歩で数分を要したところに、積善館本館が在る。現存する日本で最古の湯宿建築なのだといい、群馬県指定重要文化財に指定されているという、これまた由緒正しい温泉旅館なのである。アニメ映画「千と千尋の神隠し」で描かれた宿泊所「油屋」のモデルとなったとされることでも有名である。
赤い橋を渡って辿り着いた積善館の、同館の昭和5年に建てられたという元禄の湯は、広い空間の中に5つの湯舟を並べた独特の形状であり、四万温泉の象徴とも呼ぶべき温泉のビジョンを示している。自然光の輝きが湯船を照らしている様はまるでアニメ世界を具現したような趣きを醸しており、特別な入浴体験を味わうこととなっていたのである。