前々からとても気になっていた東京下町の居酒屋「ゑびす」を探訪した。「四ツ木」駅を降りて10分弱ほど歩くとその店は在った。訪れたのは開店時間に合わせて午後4時にほぼ近くの時刻。ちょうど店員が大きな暖簾をかけていた最中であり、そんなスタッフを横目にドアを開けたのだが、そうたところで「其処は常連さんの席なので、あっちから入ったください」という女将の声。云われるがままに反対側の扉を開けて席についた。
ところでさる本からの情報によれば、此処「えびす」は地元の呑兵衛たちに支持される名店だということだが、その実態が想像できないままにいた。何しろメニューの数がべらぼうに多いという。場末の居酒屋でまかなえる数ではないのかと感じていたのだ。そして実際にカウンターの前には膨大な量のメニュー短冊が掛かっていた。しかも其れを見て注文する客のオーダーに対しては全てを受けており、欠品は存在しないかのようなのだ。
大量のメニュー短冊の中からこれまで口にすることのなかった「カワハギの刺身」を発見したので早速注文した。出てきたものは肝付きであった。カワハギの肝を山葵醤油の中で交ぜて味わったカワハギの身は想像以上の美味。肝と身の相性が抜群であったのだ。さらに二品目には、常連客の注文が多かった「肉豆腐」にほっこり。薄めの味付けが優しくて玉ねぎの甘さがじんわりと出ていて、居酒屋メニューとしてはとても評価高なのであった。そしてさらなる三品目には今や珍しくなった「ドジョウ鍋」にもありつくことができたのだった。
もしかしたらこの「ゑびす」という居酒屋こそ、呑兵衛にとっての理想的な一軒なのかもしれないと思わせるに充分なのてあった。
■ゑびす
東京都葛飾区四つ木1-32-9