両親が高齢なこともあり、毎週帰省している。食事を一緒に摂ることも少なくないが、先日89歳になった父親が好む食卓の隅には「生姜の酢漬け」が乗っている。鮮度の良い生姜を酢に漬けて、そのまま丸かじりするといった代物である。あまりつきあいたくない、つきあおうという気持ちをそぐかのごとくなメニューだが、妙に気になってしょうがなかった。そんなところで同様の居酒屋メニューがあることに気づいて試しに口にしてみた。
居酒屋では「谷中生姜」「谷中」などという名称でも提供されている。茎が長くてピンと張っているのが特徴であり、鮮度の良さが視覚的にも実感出来る。まずピリリとした刺激が舌を刺し、喉を行き交い胃袋に送られるところのものは特別な存在感を示して通り過ぎる。胃袋に働きかける食材としては最良のものかも知れない。弱った胃袋には意外に効くかも知れないのである。