寒気染みるころになると「アン肝」が美味くなるのだ

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寒さが主張しだす秋から冬にかけてはアンコウ並びにアン肝が美味くなる季節である。殊にアン肝が夜の食堂、居酒屋にお目見えすることとなる。すなわち冬が近づくとは、「アン肝」か美味い季節になることを意味している。早速今晩は今季初の「アン肝」を頂く機会に遭遇したのだ。

アン肝とは、そのもの文字通りに、鮟鱇の肝を蒸したりその他の調理を施して提供される。仏料理に欠かせないフォアグラにも匹敵するくらいに濃厚な味わいが、まさに依存症的虜にさせること請け合いなのだ。

冬に美味くなるアンコウについては、冬の王者たる魚類に相応しいのであり、Wikipediaにも興味深い記述があった。

―――――(以下、Wikipediaより引用)
アンコウは主に小魚やプランクトンを捕食するが、種によっては小さなサメ、スルメイカ、カレイ、蟹、ウニ、貝などを捕食するものもある。さらに、たまに水 面に出て海鳥を襲うこともあり、食べるために解体したら胃の中にカモメやウミガラス、ペンギンなどが入っていたという報告もある。
―――――(引用終了)

冬の王者ことアンコウとはまるで冬の海では雑食的な巨魚である。寒い冬の海にもまた冬に相応しいドラマがあったということなのだろう。

秋の季節の「マグロの二色丼」に食欲満点

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我が国の刺身の代名詞であるのがマグロの刺身。そんな一般的なマグロの赤身と、ビンチョウマグロとを二色に丼にあしらえて提供したのが「マグロの二色丼」である。

一般的なマグロの赤身に加えてビンチョウマグロという二種類二色のマグロの旨味を丼に押し込めたというべき、絶品の味わいではあった。

東京都内で天然の虹を見た

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秋の季節の乱れ頃かと思われる本日、降ったり止んだりの雨模様の間の、一瞬の雨上がりの空には天然の虹が掛かっていたのを発見し、しばしの間見とれていたのだった。

眺めていた虹はと云えば虹色と云われる7色の光彩が弧を描いており、得も云えぬ光景だった。都会の空に見た虹は十年以上なかったことなのである。

虹を見た想い出としてはっきりしていたのは、かつて「いのちの祭り」が開催されていた長野県大町地区でのものだった。調べてみたら2000年8月の開催だったから、13年以上昔のことになる。

http://www.ultraman.gr.jp/peace/

雨模様だったその日の、一瞬の間に現れた日の光に照らされるかのように、奇麗な虹が掛かっていた。天空から地上への架け橋にも見えていたものである。

たまには東京という大都会にも、天空から大地への架け橋の様な一筋の虹がかかる。ささやかでひそやかな願いを込めて虹を見ていた。

寒さが染みる季節に「ブリの照り焼き」は旬の味わい

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冬に近づくにつれ日本海のブリには脂がのって旨さを増していく。ところでブリ料理と云えば、ブリ刺し、ブリのアラ煮、ブリ大根、等々の豊富なメニューが挙げられるが、忘れてならないのが「ブリの照り焼き」。

照り焼きとは、醤油に砂糖や味醂等の甘み成分を加えたタレを塗りながら艶を出して焼き上げる調理法也。オーブン等で上からじっくりと時間をかけて焼く調理法が一般的である。

照り焼きの調味料はつやを出しあたかも照りを生むかのごとくであることから照り焼きというネーミングが生まれた。そもそも照り焼きという調理法自体がブリの為にあるくらいにベストマッチングなのだから外せないのだ。

寒い季節にはいっそうに脂が乗って旨味を増すブリは、照り焼きの材料としてはこれ以上ないくらいなのだ。甘過ぎるくらいの濃い目の味付けも、ブリ照り焼きならば納得である。

食べる途中に箸を置いて眺めると、黒光りするブリの存在感に目を奪われていた。煮詰めた照り焼きのタレは黒々として照りを表現しているかのようだ。

「アーツ前橋」グランドオープン。「カゼイロノハナ 未来への対話」スタート

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群馬県前橋市の「アーツ前橋」が10/26にグランドオープン。開館記念展として「クゼイロノハナ 未来への対話」展が開催されている。

「地域にゆかりのある美術作家、文学者、音楽家や科学者など幅広い分野の人たちが歴史的に積み重ねてきたクリエイティブな仕事を、現代の芸術家たちが再解釈して作品をつくりあげます。これらの作品は、時代やジャンルを超えた対話によって私たちの未来を切り拓く新たな価値観を提示するものです。館内の展覧会のほかにも、館外に広がる地域アートプロジェクトなどもぜひお楽しみください。」(アーツ前橋HPより)

会場に足を運んでみたところ、いささか総花的ではあり、会館関係者たちの意図が伝わるかは疑問だが、司修さんのペインティング作品が展示されている等々の見どころは存在する。

■アーツ前橋
〒371-0022 前橋市千代田町5-1-16
TEL027-230-1144

http://artsmaebashi.jp/

上州前橋の「魯炉家(ろかや)」のユニークな薬膳カレーライス

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上州前橋の古里では先日来から「魯炉家(ろかや)」という看板などとても面白い店が気になっていて、ランチタイムに訪問し、一押し的「薬膳カレー」を食べたのだった。

見た目は普通の日本的なカレーライスだが、朝鮮人参などの薬膳的食材が用いられている。メニュー表には朝鮮人参のほかに、丁子、冬虫夏草、クコ、サンザシ、等が用いられているという。朝鮮人参とクコの実くらいしか食べた記憶がないが、やはり薬膳特有の苦くてピリリとした舌触りを感じていた。

ちょうど古里の気候も午前中の台風がらみの雨足が遠ざかったときでもあり、その「薬膳カレーライス」の仕業か否かは判然としないが、何やら身体の中からホカホカ、ポカポカとしてきたことは確かではある。

古里でまた面白い店を見つけたようである。

■魯炉家(ろかや)
群馬県前橋市南町3-42-5
027-243-7042

秋田のオリジナル駅弁「うめどー まず け!」を味わった

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秋田への旅行中は、地元名物の稲庭うどんばかり食べていた。つるつるとしてのど越しの良い稲庭うどんはさっぱりしていて何杯でもいけそうなくらいであったが、炭水化物ばかりの食ではさすがに飽きが来る。帰りの列車に乗る前に購入した駅弁の「うめどー まず け!」は、そのネーミングの面白さも相まって愉しませてくれた。

そのネーミングの意味はと云えば、標準語では「美味いけど不味い」という連想さえ掻き起こすが、愛知の方言で云うところでは「おいしいので、とにかく食べてみて!」という意味だという。まったく逆の意味をもじったような云わば逆転の発想的なネーミングの駅弁ではある。

そしてその味わいもまたご飯が冷めて食べることが基本としての駅弁の基本的要素を逆手にとって、満足できるものだった。秋田フキの炊き込みご飯や、いぶりがっこのピカタなどの、10品あまりを詰めた素朴なものだ。ご飯はあきたこまちそのものの美味さを味わえる。

この駅弁は、秋田デスティネーションキャンペーンのオリジナル駅弁コンテストで金賞を受賞したということでも注目されている。

秋田の乳頭温泉郷で紅葉三昧

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秋田県「乳頭温泉郷」への旅に出た。長かった夏も終わったはずだというのに、東京都内では一向に秋の気配を感じない。ならば紅葉を追いかけての旅も一興と思い、発作的に新幹線のチケットを手に入れていた。予想は的中して期待以上の紅葉の絶景的風景を堪能することができた。

田沢湖駅から田沢湖湖畔までは黄色に滲んだ樹々が目についたが、田沢湖から山道を進むに連れて赤々とした樹々の群れに迎えられることとなっていた。地元の人の話では今年の紅葉は例年より遅く、色づき始めたのは1周間ほど前からだったといい、今が真っ盛りのピークだということである。

目指したのは乳頭温泉郷の中で最も奥深い場所に位置する「黒湯温泉」。もう少しして11月中旬を過ぎるころになるとこの宿は、雪に閉ざされ休館してしまうのであり、投宿は今ならではのチャンスだった。バスを降りるなり冷たい風に吹かれたが、露天の湯に浸かれば身も心も温まることができた。涼しい風は肌に気持ちよく、秋の季節ならではの温もりである。

「恋しくて」に収録された村上春樹さんの書き下ろし作品「恋するザムザ」を読む

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先日紹介した「恋しくて」には、村上春樹さんの「恋するザムザ」という作品が収録されている。最新の書き下ろし作品であり、小品的短編ではあるが、何よりも現在時点での春樹さんの立ち位置を示した作品として注目に値する。

「目を覚ましたとき、自分がベッドの上でグレゴール・ザムザに変身していることを彼は発見した。」

という書き出しで始まるこの作品は、改めて解説するまでもなく、フランツ・カフカによる名作「変身」がベースの元ネタになっており、「変身」の続きを連想させるかのように物語がつむがれていく。村上春樹さん自らのあとがきには、

「遥か昔に読んだぼんやりとした記憶を辿って『変身』後日譚(のようなもの)を書いた。シリアスなフランツ・カフカ愛読者に石を投げられそうだが、僕としてはずいぶん楽しく書かせてもらった」

と記されている。「1Q84」「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」といった長編大作をものにした後の息抜き的作品だと捉えたなら春樹マニア失格であろう。

もともと同作品は「恋しくて」という些か甘っちょろいタイトルに依存するかの如くのラブストーリーを網羅して仕上げたアンソロジーである。春樹さんが選者、訳者となって編まれていても、その甘っちょろさはどうしようもないくらいだ。

書き下ろしの春樹作品「恋するザムザ」は、甚大な影響を受けたであろうカフカの作品イメージとは少々異なっていて、シンプルで突破的なものが通底に流れている。相当略して云えば、単純なものの強みとでも云おうか…。

整理して述べてみれば、村上春樹さんはノーベル文学賞受賞に向けて自らの立ち位置を示すために敢えてこの小品的作品を発表したのだ。そしてその立ち位置はノーヘル文学賞受賞者としてマイナスには働かなけれども、決してフラスの要因をも生むことがない。カフカに迎合することが村上春樹の世界にとって有効であるはずがないのである。

この数年間が村上春樹さんの旬だと云われている。旬が過ぎれば春樹さんのノーベル文学賞などは泡と消えるのである。旬を過ぎて老いぼれた村上春樹さんなどおいらは見たくもないし、そんな老いぼれた後の彼の作品などは読みたくもないのである。

今の此の出口無き状況を突破するには、以前からおいらが何度も提言しているように「1Q84」の第4章、即ち「1Q84 BOOK4」の世界を新たに描ききることしかないのである。春樹さんははたしてそれを判っているのだろうか? はなはだしく疑問なのである。

「あさりバター」で甦るあさりにまつわる想い出

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「あさりバター」を食した。酒浸りの身体にとっては肝臓に優しく、二日酔い予防にもなる。二枚貝の有り難さを感じ取ることこの上ない。数ある魚介類の中で「あさり」は、おいらにとっても、幼少の頃から最も身近な食材であり、つねにことある毎に口にしてきたものではある。それなのに日常的にはあまり存在感を感じることがなかったのは、ある意味では残念なことなのだった。

薄れた記憶をたどれば、小学生時代に1〜2度は千葉県内の遠浅海岸にあさり刈りに出かけたことがあった。内房総のどこかであるが其の詳細は未定のまま也。慣れない手つきであさり狩りを行なった記憶がこびりついている。何処かであさり狩りが特別な体験だと刷り込まされていたのかもしれなかった。

上京してからはあさり料理もよく食した。あさりの味噌汁、あさりの酒蒸し、そしてあさりバター、たまには中華料理の老酒漬けやイタリアンのあさりパスタ、等々のメニューがおいらの胃袋を満たしていたのである。だがなぜかその存在感は薄いままであったのだ。

世間一般的には肝臓の友として「しじみ」の効用が蔓延しているからなのかも知れない。だが「あさり」はそれ以上に優しい想い出として染みじみとした想い出とともに感じ入るのである。

「生姜の酢漬け」を試してみた

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両親が高齢なこともあり、毎週帰省している。食事を一緒に摂ることも少なくないが、先日89歳になった父親が好む食卓の隅には「生姜の酢漬け」が乗っている。鮮度の良い生姜を酢に漬けて、そのまま丸かじりするといった代物である。あまりつきあいたくない、つきあおうという気持ちをそぐかのごとくなメニューだが、妙に気になってしょうがなかった。そんなところで同様の居酒屋メニューがあることに気づいて試しに口にしてみた。

居酒屋では「谷中生姜」「谷中」などという名称でも提供されている。茎が長くてピンと張っているのが特徴であり、鮮度の良さが視覚的にも実感出来る。まずピリリとした刺激が舌を刺し、喉を行き交い胃袋に送られるところのものは特別な存在感を示して通り過ぎる。胃袋に働きかける食材としては最良のものかも知れない。弱った胃袋には意外に効くかも知れないのである。

今季の初の鍋料理は「牛のもつ鍋」だった

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今季の初の鍋料理は「牛のもつ鍋」だった。云わば初めてのもつ鍋は、もつが少なくて其の分野菜のエキス、旨味といったものを享受することができたのでラッキーだったのだ。とても温くさせていたのだ。今季初の鍋としては例年になくラッキーなメニューであったというべきである。

コラーゲン豊富な「牛すじポン酢」

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「牛すじポン酢」などという奇妙なメニューが目に付いたので注文してみたら、何のことはない、牛筋の煮こごり的なものであった。

一般的な「煮こごり」といえば、魚のゼラチン質を集めて冷やしてゼリー状に固めて提供されるものを指している。今回の料理の食材は魚ではなく牛筋であったということで、至極もっともなるメニューの一つだ。牛筋の煮こごり的なものはかつて様々な状況で遭遇し目にしていた。主に牛筋を扱った料理の残り物的なものとして目にしていた。それをたまたま口にしたら美味だったという記憶が残っている。

ならば牛筋を使った煮こごりがあって然るべきであったのだが、巡り合ったメニューは牛すじの煮こごりではなく「牛すじポン酢」というのだから、何とも複雑な心境にとらわれてしまった。まるで「煮こごり」が魚限定のメニューとするべき業界的な談合があったのではなかろうかという思いが頭を掠めた。

それはそうとして、煮こごりの成分にはコラーゲンが多く含まれている。魚類であれ牛筋でありその他の食材であれ共通に、なのだ。近頃では鍋料理の具として「コラーゲン」の塊が出されることもある。だかそんな人工的なるコラーゲン玉より以上に、牛筋からとったコラーゲンが有り難く、健康にも寄与することは云うまでもない。

門前仲町の「魚三酒場」で魚三昧

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地下鉄「門前仲町」駅を出てすぐのところにある「魚三酒場」に足を運んだ。新鮮な魚介類を手頃な値段で出してくれると評判の居酒屋である。

大きな看板が迎えたそのビルは、1階から4階までがすべて「魚三酒場」の店舗であった。夕方の5時少し前に訪れたときには店内は酒と魚好きの客たちで一杯であり、賑やかな会話が飛び交っている。入ってビールを飲みつつしばらくするころには、店の外で待つ人の行列が出来たくらいの人気店なのだ。

店内は「コの字」に設置された下町居酒屋ならではのつくりに目が奪われた。最初に注文したのは「マグロの中落ち」。多くの常連客に支持されているという人気メニューである。マグロの中骨にこびりつくようにして存在する赤身の部位であり、マグロ好きには特に食べたいという希少で美味しい部位である。邪道な回転寿司店などでは此れに脂身やネギを混ぜて「ネギトロ」等と称しているのだが、鮮度の良い「中落ち」にけっしてかなうものではない。鮮度がものを云うのだろうか、300円という価格と釣り合わないくらいの満足感がおそって来るのだ。

次に注文したのは「えんがわ」。カレイやヒラメのひれにつながる筋肉の部位を指しており、寿司店などでは高価な部位である。なかなか注文するのを躊躇してしまう部位だが、今回の同店では来る前から食べたかったメニューの一つだ。運動量豊富な筋肉部位であり、白く締まった魚の筋肉だという希少性もさることながら、魚の身でありながらコリコリとした独特の食感が魅力である。想像以上に大きくカットされたえんがわを頬張ると、また新しい魚の味わいに魅了されたと云っても過言ではない。

その後、アワビ等の追加注文をしつつおいらは、おいらにとってはあまり相性の良くない深酔いのもとでもある久しぶりの日本酒に手を出してしまっていた。旨い海鮮類には旨い日本酒が似合うということを思い出していたからなのだが、ほろ酔いで帰路に着くはずの時間は、けっして幸いとは云えない時間なのであった。

■魚三酒場 富岡店
東京都江東区富岡1-5-4 1F・2F・3F・4F
03-3641-8071

尾崎コレクションこと「MY FIRST OZAKI」を視聴した

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尾崎豊が亡くなって20数年あまりがえる今年この先日に尾崎コレクションこと「MY FIRST OZAKI」というDVD&ブック本が発刊された。

「尾崎豊は、なぜ今も支持さされているのか?」

ということをテーマにして出版されている。尾崎豊のディレクターとして活躍した須藤晃という人のイントロ的文章「尾崎豊という人」が胸を打つ。

「尾崎豊は転げ回って 傷つく自分を音楽で表現しようとしました。全身全霊むをかけて。」

表題は初めて接する尾崎豊のファンをターゲットにしているかのようだが、古くからの尾崎豊のファンにとってもとてもビビットに感動させてくれた。

其の映像は、尾崎豊の15曲のビデオを収録されている。現在の映像的レベルと比べればとても劣った映像だが、カメラマンや映像ディレクターたちの真摯な熱情が伝わってくる。そしてなによりの、尾崎豊に対するリスペクトした心情が伝わってくるのだ。

ノーベル文学賞作家、アリス・マンローの「ジャック・ランダ・ホテル」(村上春樹訳)を読んだ

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今年のノーベル文学賞作家、カナダ人アリス・マンローの「ジャック・ランダ・ホテル」を読んだ。翻訳したのは村上春樹さん。本年9月に刊行されたばかりの「恋しくて」中の10作品の中の1作として収録されている短編である。

カナダ人女性作家アリス・マンローは、誰もが認める短編小説の名手だという評価が定着している。「現代のチェーホフ」等という最大級の評価もあるという。カナダ人としては初めての受賞であり、米国の隣の衛星国的な立場のカナダ国民にとっては非常に歓迎すべき受賞であったに違いない。村上春樹さんを差し置いて今年のノーベル文学賞を受賞した政治的背景には、カナダ人作家だと云うことが大きく影響していることが推測可能である。

一読した感想としては、まずは、男女の物語にしてはとてもテンポの良い成り行きや、乾いた表現の中に埋め込められている会話表現のユニークさなのだ。会話には直に顔を直面した音声的なものの他に、手紙の遣り取りとしての会話があり、実は後者が其の重要なポイントとなっている。

「ジャック・ランダ・ホテル」は、読み始めてのところではさっぱりといった遣り取りが続くのだが、実は別れた男と女の会話が、特別な文書の遣り取りの中で展開していくというストーリーである。翻訳者の村上春樹さんをして「まるで壁に鋲がしっかりと打ち込まれるみたいに。こういうのってやはり芸だよなあと感心してしまう。」と云わせたくらいな希有なる名人芸的な描写が活きていた。

前橋文学館にて「書物にみるアートの世界」が開催中

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前橋文学館にては現在「書物にみるアートの世界」という企画展が開催されている。

萩原朔太郎など郷土の文学者にかかわる書籍・雑誌を、表紙、文字組み、製本など、ブックデザイン面から紹介しているという企画展である。朔太郎さんの書籍の多くがブックデザインにおいても観るべきものが多いということであり、そんなブックデザイン、即ち装幀における一流の展示物を観ることが出来て満足であった。

朔太郎自身が描いた猫のイラストが黄色い表紙に印刷された詩集「定本青猫」は出色の出来栄えである。

朔太郎さんの「月に吠える」の復刻版はおいらも所有しており、其の表紙の装幀の素晴らしさには以前から瞠目していた。同書以外にも様々な朔太郎さんの書籍における装幀の見事な仕事ぶりに接すると、当時のアナログ的出版物に関わる装幀家たちの見事な仕事ぶりに脱帽してしまうのである。

http://www15.wind.ne.jp/~mae-bun/
■前橋文学館
群馬県前橋市千代田町三丁目12番10号
027-235-8011

豚の街前橋の今日的B級グルメ「tonton汁」を食した

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前橋市内の「モモヤ」というレストランで「tonton汁」というメニューを食した。「豚汁」ならぬ「tonton汁」である。豚肉を使用した味噌汁仕立ての料理だが、豚汁よりもはるかに具沢山でかつ手が込んでいて一つ一つの具材に驚きが存在する。

ゴボウ、ジャガイモ、大根、コンニャク、等々の根菜類に厚揚げや小麦粉の練物等が加わって、食覚や味覚のバラエティーが広がっている。豚汁という地味目な料理が逸品的B級グルメとしての存在感をアピールしていることを実感させられる。

近頃の前橋市内の飲食店が盛んにピーアールしている「tontonの街」の豚肉料理の一つとして地元ではポピュラーなメニューとなっているのだ。

「tonton汁」を名乗るには幾つかの条件があるという。その条件とは下記の通りだ。

1. 群馬県産の豚肉と豊富な野菜を使い具だくさん。
2. きのこをバターソテーしてから入れるため、味はまろやか。
3. 白と赤の合わせ味噌使用のため、コクがありちょっと洋食風。
4. 〝豚のつみれ〟や〝ねじっこ〟(すいとんのようなもの)が入った昔懐かしい味。

■パーラーレストラン モモヤ
前橋市千代田町2-12-2
027-231-5017

名画がじっくり味わえる上州桐生の「大川美術館」を訪問

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上州群馬の桐生市内「大川美術館」を初訪問したのである。中央前橋駅から上毛電鉄というローカル線に乗って終点の西桐生にて下車。そこから急峻な丘に続く道を歩くこと十数分で「大川美術館」に辿り着いたのだった。

■大川美術館
群馬県桐生市小曽根町3-69
TEL 0277-46-3300
http://www.okawamuseum.jp

到着した其の同美術館の入り口はそっけないくらいに地味な佇まいだが、その館内はと云えば想像以上にすこぶる充実した展示空間が広がっていた。

現在の展示テーマは「大川美術館の軌跡」となっている(10/5(土)~12/15(日))。開館以来積み重ねてきた収集・展示活動の成果を振り返ることがテーマとなっている。これまでに開催してきた特別企画展からそのエッセンスを抽出し、収蔵作品を、「顔」「街」等々のテーマに分けて展観する、とされている。おいらが今回初めての訪問したにしたことに鑑みれば最もラッキーな展示テーマに遭遇したといえるのかもしれない。

改めて説明するならば、同美術館の収蔵作品の充実量は地方の美術館の一般的推量を遥かに超えて充実している。松本竣介、萬鉄五郎、野見山暁治、等々の日本人から著名な西洋人画家達にいたるまで、当館開館時の大川栄二コレクション1,200点あまりが収蔵されているのだから驚きではある。

日本の洋画家たちの代表的な作品群が収蔵展示されていることに加えて、ピカソ、ブラック、ユトリロ、たち巨匠の作品に巡りあえた悦びに舞い上がることにもなった。例えばピカソの作品は「卓上」といったカテゴリーに仕切られた部屋ブースにて展示されていたのだが、巨匠の作品ということが一目で感じ取れるオーラに導かれており、思わず知らず凝視して立ち竦んでしまったというのが実態であった。

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紅葉一歩手前の赤城山の覚満淵は、赤城本来の素の姿なのだった

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上州赤城山へとバスで向かった。終点の「赤城山ビジターセンター」で下車すると、すぐのところには「覚満淵入口」の表示板が迎えている。赤城の観光地として「大沼」と「小沼」の間に位置して知名度は低いが、湿原に生息する植物や綺麗な湖沼に息付く小魚等々の生息地として注目が高い湿地帯である。其処は標高約1360mに位置する極めて希少な湿原帯である。別名「小尾瀬」という名称も、尾瀬万歳の上州人の一人としてのおいらにとっては納得なのである。

もう少しの時間が経過すればこの一帯は紅葉で覆われることになるだろう。けれどもそんな紅葉の色彩が乱舞するような風景は残念ながら感受されずにいた。だが却って、今日の綺麗な湿原の空気と沼地の凛として澄んだ佇まいが、より一層に強く感じ取れていたのだのだった。紅葉ありきの秋季の観光地ではなく本来の赤城山の姿が其処にはあったと実感することができたのである。紅葉の時季は迫っているが、これからそんなピタリの紅葉に遭遇できるかどうかは判らない。だが今現在の目にした赤城山の風景こそは、本来の赤城の素の姿なのだと感じられたことはラッキーでもあった。

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散策の後で立ち寄った食事処では、十割蕎麦を味わうことができた。しかも丁度いいタイミングで新蕎麦だということなのであった。上州蕎麦の味付けそのままに濃い味だったので新蕎麦の風味を味わうという訳にはいかなかったのだが、パサパサとして途切れる独特な食感の蕎麦は、此処でしか味わうことができないものだったといえよう。