通常「モツ煮込み」と云ったら、牛の小腸の部類のモツを煮込んで出されている。蒟蒻、牛蒡、大根、人参、等々の野菜は貴重な脇役としてその役割を果たしている。だがモツの煮込み系料理と云えば、「牛筋煮込み」「ハチノス煮込み」「豚モツ煮込み」等々の種類があるのであり、一概に「煮込みは牛の小腸を煮込んだ料理」と断定するのは間違いがある。
牛筋煮込みも、ハチノス煮込みも、或いは豚モツの煮込みも、それぞれに味わい深さが存するのであり、どれが一番秀逸かと云うことは決めかねるものではあるのだ。おいらの個人的な酒肴で、おっとっとと趣向で述べれば「牛筋煮込み」に一票を投じたいくらいに好みなのだが、然れども「牛モツ煮込み」「豚モツ煮込み」「ハチノス煮込み」が無くて済ませられるかと問われれば、否と答えるしかないのではある。
そんなこんなことを考えていたところへ、目に飛び込んできたメニューが、牛モツ、牛スジ、ハチノスの3点盛り揃えの3点盛りの「牛モツ煮込み」であった。
メニュー表を読めば、たしか牛の3種類の部署のモツが丁寧に煮込まれているとのことである。反射的に注文していたものではあった。3種類の盛り揃えとは最初は邪道かなという印象を強くしていたのだが、口にひと口含ませてみれば、これが想像以上に満足のいく味わいだったのではあった。刷り込まれた思いこそが邪道なのだと合点していた次第哉候。