空豆を焼いて食べたのだ。大ぶりのさやに大ぶりの緑色の豆がおさまっている空豆は年中食材とは云い難く、季節感を伝えてくれる。今の時期は収穫量も多く、旬の食材の一つである。
通常は茹でて味わうものだが、焼いても旨く、少々硬いが身が締まっていてかえってその野趣を味わうことができる。特に弱火でじっくり時間を掛けて焼いた空豆には頬が緩んでしまうくらいだ。
さやごと火に掛けるので焦げたさやを目の前にするとグロテスクではある。それでも手で裂いてみれば、鮮緑色のはじけるような豆の生命感を感じるのであり、そんな豆の身を見るにつけ夏近き季節の到来を実感することとなった。
子供の頃から頻繁に食べたという記憶は無く、今でもなお希少な食材であろう。我が国においても、蚕豆、四月豆、五月豆、夏豆、冬豆、雪割豆、 大和豆、雁豆、唐豆、南豆、等々と、地域それぞれにその呼び名は様々であるという。中でも一般的な「空豆」という呼び名の由来は、さやが空に向かって身を付けていることから付けられたネーミングであり、関東出身のおいらにとってはやはり「空豆」という呼称が一番しっくりくるのだ。