上州の下仁田町で生育されることから名つげられた「下仁田葱」は、別名「殿様葱」とも呼ばれ、そのでんぐりと太って丈の短な外見が特徴的だが、その個性的な外見もさることながら、独特のワイルドな旨みの味わいにおいて、多くのファンを獲得している。近頃では東京都内の料理店やスーパー、八百屋の店頭等でもよく見かける品種となっている。通常の葱に比べて食べ応えがあり、辛味も強く、鍋料理の具材には適しているので、おいらも家の鍋料理には下仁田葱を用いることが増えているところだ。熱を加えることにより、少々きつい辛味風味も一転してマイルドな甘さに変身していくさまが、これまたファンにとってはたまらないところだ。
そんなところで遭遇したメニューが「下仁田葱の天ぷら」だ。そもそも葱は天ぷらの具材としては少々役不足であり、玉葱や他の野菜に比較して、どうにも主役にはなり得なかったものだが、下仁田葱ならば堂々と主役がはれることを見せてくれていた。大きくカットされて揚げられた天ぷらをかじると、葱の繊細な香りが口に拡がっていた。滑らかな葱の触感も美味く生かされており、天つゆも要らないくらいに奥深い味わいに満足したのだった。