御岳山に登った、或は散策したのでした。
というのも今時の語感的常識で云えば、登山とは山に登ることであり其れは即ち山を歩くこととほぼ同様の意味を指しているものであろう。であれば「登山」と云って何ら憚れるものは無いのではあるが、然しながらおいらが幼少のころに耳にしていた「登山」と云うにはギャップがあまりにも大きすぎるのであり、ここは御岳山を散策したと云うのが妥当だと考えていたのであった。ここで云う幼少のころの違和感を増大させていたのが、所謂人気野球スターこと長嶋茂雄選手が選手当時に「山ごもりをする」と宣言しては、どこかの高原温泉地で温泉に浸かってたりしていたという事実を耳にしたときではある。結局のところは東京を離れて、綺麗な空気の高原地帯で温泉に浸かりながらトレーニングに励んでいるということに尽きるのではないか? それを後生大事に「山ごもり」等と云う語彙に当てはめてマスコミ発表するなどと云うのは勘違いにもほどがある! と、些か青臭い感性にて感じ取っていたからであった。「山ごもり」=「温泉漬け長閑トレーニング」を受け入れるのには相当の年月を必要としていたことをここでカミングアウトしておくことにする。
前書きが長くなったが「御岳山」とは、東京都内であり、青梅市郊外の一地帯であり、実際に高尾山に次いで東京都内で登山客を集めるという有力な観光山なのである。都内に居住する人間にとっては散歩感覚でぶらりと訪れることが可能となっている。それくらいに親しみ深い場所なのである。
青梅線の青梅を下車して「奥多摩」行きに乗り換えて十数分乗り、「御岳駅」にて下車。バスでロープウェイの「滝本駅」まで十数分。そしてロープウェイに乗って登ること6分あまりで、「御岳山駅」に到着した。「御岳山駅」周辺には都内を展望することができ、天候事情がよければ「東京スカイツリー」「東京都庁ビル」等が眺められると云う。本日は空気が濁っていたのかそれほどの眺望が得られなかったのがちと残念ではあった。
ロープウェイ駅から歩くこと30分弱で、「武蔵御嶽神社」に到着した。歩道は緩急取り混ぜながらの興味深いつくりでもてなしてくれていた。神社下には数多くの宿坊が在り、商店街も存在する。旅人を山岳地域全体でもてなしていると云うことをありありと感じさせている。宿坊街、商店街の狭い通路ではスクーターで行き交う土地の人々が在り、まるで高原の一都市の姿を髣髴とさせているのだ。
神社へお参りした後に、商店街の食事処で、山菜蕎麦を食した。800円也。駅の立蕎麦屋に比べると倍ぐらいの値段だが、用いられている蕎麦の味わいや少々濃目のつゆなど、ジーンと胃袋に染み入って満足であった。現代登山とは云えども数時間の散策を行なった後の、浅い疲労感を払拭するパワーをもらうことが出来たのであった。帰り道は蕎麦のパワーで軽々乗り切っていたのだった。
紅葉の季節にはまだ早すぎいていたようで、路傍の樹木は少し枯れかけていたという、鑑賞的には中途半端なものではあった。いつか紅葉の時期にまた訪れるぞと云う希望を胸にしながら、帰路についていたのでありました。