「ゴーヤのおひたし」という珍しいメニューが目に付いて注文してみたところ、その苦々しさがストレートに舌を刺し、まことに珍しい食事の体験だったのだ。単純にゴーヤをスライスしたものを塩で浅漬けにしたものに、鰹節がまぶされていた。
今年の夏はゴーヤをそれ程食べていないな、それ程特別な付き合いをしてこなかったな、そんな回顧的気分に一瞬とらわれていた。おいらは夏には夏の野菜の中でも最もゴーヤに愛着を持っている。キュウリ、トマト、ナス、ピーマンと、いった夏野菜のどれよりも以上にゴーヤが好きなのだ。
涼しい秋風が吹きかう今の季節になっては、ゴーヤの何とも云えぬ猛暑ならではの味覚体験は難しくなった。猛暑でくたくたになり、汗だくた苦になった身体を、ゴーヤは俊としてくれてことがあって、それこそが食と味覚と季節の相乗作用だったと認識しているおいらにとって、ゴーヤとは特別な味覚を届ける稀有な食材だった。今日が今年の食べ収めかと思うととても切ない思いにとらわれてしまっていた。