思いがけない「ウナギ三昧」の日だった

今更のように梅雨があけて猛暑が都内を襲撃している。こんな日は道を歩くだけでも直射する陽射しに為す術もなく、流れ出る発汗をくい止める方策さえ判らず、ただ体力の消耗におびえるばかりだ。

経験的に「うなぎ」が夏の体力消耗に効果ありということを知って/いるおいらは、無意識裡にうなぎを求めていたのだろう。今年の土用の丑の日は7/21と8/2の日だというから未だ少々先の話ではあるのかもしれないが、強烈なうなぎに対する渇望が襲いかかってきたのが今日だったという訳なのだ。

土用の丑の日にはうなぎを食べるという習慣は、文政時代に平賀源内さんが提唱したという説が一般的だが、ただ体力の落ちる夏場に栄養補強するという意味合いばかりではなさそうなのである。かえって、夏場にはうなぎが売れない業者達の苦肉の策として、土用の丑の日が提唱されたという珍説もあるくらいであり、二百年もの時代をさかのぼって時代考証を行おうとしても無理な話であり、ここはそっと、うなぎと平賀源内さんとの個人的な相性の良さを思い浮かべてみるくらいが宜しいのだろう。

さてそうして帰宅途中の街中を歩いていると、立ち寄った居酒屋のメニューに「うなぎ蒲焼」「うなぎ肝焼き」というメニューが視界に襲ってきた、というのは少々大袈裟だが、視界に程よく飛び込んできていたのだった。思わずそのメニューを注文したのは云うまでもない。うなぎ専門店や高級料亭ではなく大衆居酒屋にてうなぎを食せるのは、思いがけない幸運だったというべきだろう。このところうなぎの取引価格は上昇の一途を辿っているというニュースを、つい数日前に目にしたばかりだ。

このうなぎが国産品か海外からの輸入物かを確認することはできなかった。しようとしたところで店員が知って居る訳でもなく、たとえ知っていようとも答えようともしないだろう。だからその解答は不明ということでしかない。

特筆すべきなのはそのうなぎが体幅5センチはあろうかというくらいに大振りでいて、工場での調理仕込みのものではなく、蒸して焼いて出されたものだったということだ。人の手間をかけた料理と工場にて大量生産された調達品との違いであるが、今宵のうなぎは手の込んで提供された旨みを味わうに充分なものであった。