実家の両親が云うのだが、「近頃のキャベツは硬くてかなわない、昔のキャベツは柔らかくて味が濃かった」のだそうだ。そんな昔のキャベツの味はとうに忘れたおいらだが、確かに怪訝なこともある。半分カットでビニールに包まれたキャベツなどは、1週間以上日持ちして腐らない。昔のキャベツはすぐ腐ってしまい、腐りかかりの匂いを嗅いでいた記憶もある。確かに昔食べていたキャベツと最近のスーパー売りのものとは違うようだ。品種改良で日持ちがし腐らなくなったキャベツは、そのぶん硬くなり、味も淡白なものとなってしまったのだ。
そんな中、八百屋の店頭で「春キャベツ」を見つけたときは、思わず近づいて触感を確かめたくなった。一番外側の葉に触れると、何となくいつものとは違った柔らかさ。顔を近づければ仄かな春の香りさえ漂っている。早速買い求めて調理してみたのだ。
瑞々しい春キャベツを細かく刻んで、お好み焼きを作ることにした。たっぷりのキャベツにお好み焼き粉だけのシンプルな取り合わせ。それを厚めのたまにして鉄板の上で中火で焼いたのだ。キャベツに弾力があるからなのか、生地は薄っぺらくなることも無く、ふっくらとしたお好み焼きに仕上がったのだ。
口にしてみれば、キャベツの筋は熱によって程よく緩和され、もちもちした食感が拡がって来る。お好み焼きが春キャベツという特別な種類を使用することによってこれだけふっくらとしたものに変身するのだ。最近の料理の中ではヒット作といえるかもしれない。