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江藤良香という名の、まるでTBSの江藤愛アナウンサーを髣髴とさせるように可憐な、26歳のOLが主人公。彼女には悩みがあり、「イチ」と「ニ」という二人の恋人未満の男の間で揺れている――という設定だ。
前作「夢を与える」では少々背伸びをして非現実的なプロットに違和感を覚えてしまったが、今回の新作は妙に背伸びをすることも無く、26歳女性の等身大の日常が描かれている。作者の綿矢りささんも26歳であり、ある種の私小説的な作品として読むことも可能だ。
とはいえ、若者風俗や甘いラヴストーリーを期待した読者は、少なからず失望するかもしれない。20代も中盤の主人公OLは、未だ男性経験が無く処女であり、理想の恋愛に生きるか? あるいは相手とのときめきの無い相手との現実的な交際を選ぶか? という二者択一に迷ってうろうろと彷徨ってしまう。読者としてみれば、あれこれと彼女の心の悶々のモノローグにつきあわされてしまうことになる。何だか締まらない展開にいらいらさせられるのだが、少女小説で磨いた綿矢さんの独特の筆致が、最後まで読者を連れて離すことはない。
タイトルにもなった「勝手にふるえてろ」という台詞を吐いて、主人公は誰かを突き放すことになる。その誰かというのはそれまでの自分なのかもしれない。こう来たかという展開であって、ある程度は予想の範囲内だが、賢い選択だということはできないだろう。到着点ではなく始まりの一地点であり、まだまだこの先、迷いは続いていくはずだ。
「現代の女の人の気持ちを鮮明に描いたつもりです」と、綿矢りささんは、公式サイトのメッセージで語っている。
http://bunshun.jp/pick-up/furuetero/
未だ初々しい彼女の語り口はとてもうぶであり、癒されるものが無い訳ではない。これからの成長に益々興味が湧いてくる。行け行けどんどんのギャルばかり見せつられ辟易してきた我々としては、たまにはこうした小説も良いものである。