鳩山由紀夫首相スピーチにおける「正」と「邪」

twitterにて鳩山由紀夫首相をフォローしている(フォローされてもいる)せいだか知らぬが、首相の施政方針演説の内容が気にかかって仕様がない。「命を守る政治」を声高々に宣言したということはマスコミの報道で知ったが、その内容の詳細についてはなかなか詳細が伝わってこなかったのである。具体的なイメージが、いまいちピンと来ないのだ。

あらためて全文を読み進めてみたのであるが、これはまっとうな政治宣言である。これくらいに高々く宣言をした政治家は、近頃の我が国首相のスピーチにはたえてなかったのではないかと感じ取れるくらいに、首尾一貫している。鳩山首相が以前に発表したとされ、米国マスコミに勝手に引用され叩かれていた某論文ほどのインパクトと正道性は失せたが、それでも一国の首相の演説に値する何かはある。なかなか政治的メッセージとしての読み応えは確かにある。

この演説に関して、平田オリザなる人物が関与している。彼がスピーチライター的な役割を担っているという報道もある。平田オリザ氏が苦学して国際基督教大学を卒業したのち、演劇の世界などで活躍中の人物であるということは周知である。少し前にはTBSのニュース番組のコメンテータとして出演していたこともあり、興味深く、かつ有能な人物であるのだろう。ちなみに「晩聲社」という出版社から多くの著作を著していたことなど今知ることとなり、あらためて読んでみたいと思っていた次第である。

鳩山首相のスピーチ内容については関係者により精査したものであろうことから、ここでは徒な助言は避けるつもりであるが、スピーチの方法、演技指導にまで平田氏の助言が回っていたとすれば、これはちと首を傾げざるを得ないのである。以下に、今回の鳩山首相施政方針演説における、演出上の誤ったポイントについて2点ほど指摘しておきたい。

1.クライマックスにあたり、前を見据えて大声を発するという手法は邪道である。

この手法は、田中角栄、小泉純一郎がかつて成果を博していた手法なのであるが、鳩山さんには決して似合わないのであります。そのことを自覚した方が良いと思うなり。この手法は悪くするとヒトラーを想起されるものでもある。ちなみに弟の邦夫さんは田中角栄さんの秘書もされていたということなので、その影響が未だに尾を引いているのかなどと思ってもみたのです。悪しき影響などなければ良いのだが。

2.ガンジー師に対する尊敬の念を表明するのは賛成だが。

日本の政治について言及するに当たっては、やはり日本人について述べていただきたい。例えば、良寛、親鸞、といった日本の仏教家や芥川龍之介、太宰治、萩原朔太郎、永井荷風、などなど、その深甚なる世界観を引用することが日本人の有権者にとってはどれだけ訴えかけることになるのか、多分、平田氏は思いもつかないことだったのであろう。