村上春樹の短編集にみる都合の良い女性観

近頃発売された村上春樹の短編集「めくらやなぎと眠る女」には、新作に混じって1980年代に発表された作品が多く収録されている。「カンガルー日和」という作品もまた1981年に発表された作品であり、懐かしさとともに読んだ。

主人公の彼と彼女が動物園にカンガルーを見に行く、ただそれだけのお話なのである。そのむかしこの作品を読んだ状況は失念したが、何作品かを読み進めて、やはりというのか、春樹さんの世界観の一端を垣間見たような気がしたのである。何しろ春樹さん作品にはおおよそ良い関係の女性が登場してくる。きっと彼は女に不自由したことなどなかったのだろう。それはそれで天晴れなのだが、おおよそ登場する女性仝が、春樹さんの世界観をほとんど体現した存在として描かれる。つまり春樹さんの世界観が登場人物としての女性に乗り移ってしまうかのようだ。これは恋愛が成就するか否かの物語のストーリーとは関連無く表れる。他の作家になかなか見られる現象ではないのだ。軟派小説と呼びたくなる所以でもある。

写真で見る限り村上春樹さんはそれほどイケメンではなさそうだし、セックスアピールも人並み外れて強大だとも思えない。ならば彼の都合の良い女性像、女性観は、どこから発生するのだろうか? おそらくそれは、物語作家としての資質にあるのだろう。つまらない物語でも、ありきたりなストーリーでも春樹さんが書くと一段と輝いてくる。こんな作家はやはり稀有と云わざるを得ないのである。

村上春樹さんの「1Q84 BOOK3」発売。「BOOK4」も既定の路線か?

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